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THE CHASER
2008年/韓国/125分/R-15 監督: ナ・ホンジン 2004年に韓国で実際に起きたという、10か月に21人を殺害した疑いで逮捕された、韓国で“殺人機械”と言われたユ・ヨンチョルの事件をベースにした作品。 日本でも昨年に公開され、評価の高い映画だったけれど、韓国の犯罪映画って暴力描写も半端じゃなくリアルで、体調とかその時のバイオリズムによってはちょっと退いてしまうこともある。本作もそう。 WOWOW放映で鑑賞。 録画を深夜に鑑賞。作品によってはそのまま知らぬ間に寝てしまうこともあるけれど、寝るどころか物語の展開にぐいぐい引きずり込まれ、画面に釘づけで頭はしっかり醒めてきたほど。見る者を捕らえて離さないこの映像の力は凄い。 風俗業を営む元刑事のジュンホは、店の女の子が相次いで失踪していきり立っている。客からの電話に、風邪で休んでいたミジンを電話で脅しつけて待ち合わせ場所に行かせる。このミジンの相手となる電話番号が、失踪した女たちの最後の客の電話番号であることをジュンホは偶然にも気づく。そしてミジンに男の家に着いたら住所をメールするように伝えるが、ミジンからはなんの連絡もなく、携帯も繋がらず、ジュンホは必死にミンジと女の失踪にからんでいるだろうと思われる男の居場所を追跡しだす……。 損得がらみから始まるジュンホの追跡は、人としての痛みと怒りをもった追跡へと変わっていく。そして殺すことで快感を覚えるヨンミンの異常性。 警察の生ぬるい捜査を通して上意下達の韓国社会への風刺も描かれている。 刑事時代に風俗業の副業がばれて解雇されたジュンホ。出る釘は抜かれ、抜かれた釘は、しかし、抜かれてもなお警察や国家を蹴飛ばして一人突っ走る。これが韓国映画の底流にドクドクと力強く流れている、彼ら映画人たちの精神のようにも思える。 ポン・ジュノ監督の「グエムル~漢江の怪物」でも、怪物にさらわれた少女を命を賭けてでも救わんとする家族の姿を描いた作品だったが、国家権力を徹底的にコケにしたポン・ジュノの映像に、彼の中の揺るぎない批判精神を垣間見た。 ミンジの7歳の娘の涙に人としての痛みを感じ、ジュンホは男とミンジの行方を必死に探す。ジュンホの内なる「恨」が彼を衝き動かす。ここでも安易なヒューマニズムなど蹴飛ばされる。 映像を通してジュンホの焦り、辛さ、苦しさ、怒りが伝わってくる。 ジュンホを演じたキム・ユンソク。そしてひ弱な青年とも見える異常な殺人者を演じたハ・ジョンウ。二人の演技も見応えあり。 先日観た「息もできない」も、監督・製作・脚本・撮影・編集・主演を一人でこなしたヤン・イクチュンの監督デビュー作にして、世界各国の映画祭で映画賞を受賞し高い評価を受けた作品。 そして本作も、ナ・ホンジン監督の長編デビュー作にして、すぐさまハリウッドでのリメイクが決定したという。 二人とも1970年代生れの30代半ば。韓国では確実にクオリティの高い若手映画人が生れてきていると実感する。 彼らの社会に対する問題意識の高さ、視点の確かさでもあるだろう。生々しく激しい暴力描写を通して彼らの内面の苦痛が描かれている。 敗戦から高度経済成長にあった日本社会を背景に、日本の映画人たちも戦後の日本社会の光と闇、歪み、底辺に追いやられ生きる人間たちに焦点をあて、素晴らしい作品が次々と生み出されていった。 描くべきもの、描かなければならないものを、彼らは映像を通して語り続けてきた。 映画は社会を映す鏡でもある。韓国の映画をみていると、そんなかつての日本の映画人たちが描き続けた生々しいリアルさと重なるように思う。 ちょっと余談だけど、
by mchouette
| 2010-04-23 00:00
| ■映画
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