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BREATHLESS
2008年/韓国/130分/R15+ at:シネマート心斎橋 監督・製作・脚本・撮影・編集: ヤン・イクチュン 20年以上も前だろうか、覚束ない記憶だけれど、猪飼野に住む詩人・宗秋月さんの講演と朗読会「はじけ鳳仙花」を聞きに行った。大阪にある地図にない「猪飼野」と呼ばれている町の存在、そして朝鮮民族の精神風土ともいえる「恨(ハン)」という言葉を初めて知った。 己に向けられた「恨(ハン)」は、ジレンマ、葛藤といった言葉では埋め尽くせない、魂が引き裂かれる痛みが渦巻くものでもあるだろう。 韓国映画で描かれる痛さが半端じゃなく強烈なのも「恨」に根づいているからだろうか。 ショッキングな冒頭シーン。路上で一人の男が女を殴りつけている。悲鳴をあげる女。女を殴る男に一人の男が近づき、その男を殴りつける。女を助けるかと思うと、次に女の頬を何度も殴りつける。「殴られるだけでいいのか! このクソアマが!」と罵声を浴びせる。 この男がサンフン。 借金の取立て屋をするサンフンがみせる剥き出しの暴力。世間に背中を向け拗ねたような振る舞い。異母姉と甥にみせる無骨な愛情表現。赤裸々なまでの感情表現。 母に対する父の暴力にじっと耐えていた少年時代。逆上した父のナイフは、止めに入った妹の胸を刺し、その妹を負ぶって夢中で病院に走るも妹は出血多量で死に、後を追いかけた母もまた車にはねられて死んでしまった。 そこには、悲鳴をあげ引き裂かれるサンフンの魂の叫び、彼の渦巻く恨がヒリヒリとした焦がるような痛みで伝わってくる。 サンフンの吐き出した痰が一人の女子高生のネクタイにかかり、一歩もひかぬその女子高生を殴りつけたことから出会ったサンフンと女子高生ヨニ。 ヨニは、母が死に、ベトナム戦争帰りのアルコール依存症の父と、ヤクザな弟とのささくれ立った家庭にあって勝気に生きている。 ![]() 互いに悪態をつきながらも引寄せるものがあったのだろう。 ヨニの膝に頭を乗せ搾り出すように泣きつづけるサンフン。そのサンフンに覆いかぶさるようにヨニもまた悲しみを搾り出す。 血まみれになり息を引取ったサンフンにすがって泣き叫ぶ異母姉や友人マンシクの横で、立ち尽くして声を殺して泣くヨニ。 作中でサンフンとヨニそれぞれが初めて見せた涙のシーン。 本当の悲しみは、どうしようもないほどの悲しみとは、声に出して外に出るのではなく、内に向かって、喉を切り裂き、内臓を切り裂き、魂を引き裂くのだろう。 この痛みもまた「恨」なのだろう。 悲しく痛い魂がそっと触れ合うように、サンフンとヨニの心の琴線が静かに触れあったのだろう。 妻に暴力を振るい続け、出所後は息子の暴力にも寡黙に耐えつづけるサンフンの父。ベトナム戦争から帰還後、アルコール依存症になり、時に暴力を振るい、いまだに妻の死を受け入れられずにいるヨニの父。 彼らの暴力を生み出した傷口はどこにあるのだろうか。 「恨」を生み出した韓国の歴史が、人々の痛みまでが、その映像から黙ったままで滲み出てくる。 「恨」という彼らのDNAに刷り込まれた心が、安っぽいヒューマニズムやロマンチシズムなどを蹴散らし、安易なレベルで妥協しない。己を許さない。 暴力描写を透して暴力を振るうサンフンの心が悲鳴をあげて泣き喚いているのが伝わってくるのが悲しい。 ヨニが街中で偶然にも出会った暴力で金を取り立てる弟の姿。その姿がサンフンに変る。露天商をしていた母を襲った取立て屋たち。幻影ではなくヨニの無意識に焼きついた過去の記憶の残像だろう。なんとやるせないラストシーン。 本作で主演のサンフンを演じたヤン・イクチュンは、製作・監督・脚本・編集を兼ね、役者として活動していた彼のこれが監督デビュー作。「自分のなかのもどかしさを、ともかくも、ただ吐き出したかった」と本作について語っているが、映画製作にあたっては資金難に悩まされ、家を抵当に入れて作品を完成させたそうだ。 剥き出しの魂を、絵空事ではない現実を、ささくれ立った己の心を、半端じゃなくとことんの描写で描いた圧倒されるばかりの韓国映画と、そして韓国映画界の素晴らしい才能に、また一つ出会ってしまった。 本作に漲っている緊張感と痛みの表現はまさにBREATHLESS
by mchouette
| 2010-04-14 13:06
| ■映画
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