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![]() 1960年/日本/98分 原作は幸田文「おとうと」。 1976年に同原作で浅茅洋子と郷ひろみで再び映画化されている。舞台は大正時代。 その時代の質感を映像に出したいと、市川崑とカメラマン宮川一夫が生み出したフィルムの「銀残し」。カンヌ映画祭でも高く評価され高等技術委員会賞を受賞している。以降、世界中でこの手法が使われるようになったという記念碑的作品。 銀残しの状態でのフィルム保存は不可能で公開当時の状態で観ることは叶わないことだけれど、今回NHK・BSでは、残されたフィルムを元に、公開時の銀残しの映像に近い状態にまで再現させた”ニュープリント銀残し版“として、市川崑監督の「おとうと」が放映された。 今回の「おとうと」鑑賞は、宮川一夫カメラマンの映像を堪能したといってもいいだろう。 書斎にこもりっきりで家庭内の不和に眼をそむける作家の父、後妻でリューマチを患う母親の僻みと愚痴。そんな家庭に反撥し不良化していく弟。女学校に通う勝気な姉は、そんな弟に愛情を注ぎ、家事をきりもりしている。 明るい太陽の下、昼間の土手を歩きながら、姉は男言葉で男兄弟のように弟と接する。そんな姉をからかいながらも甘える弟。 家に帰ると、屋外の光は遮られ、障子を通す光だけが明るい。 勝気な姉は、健気な姉になり、黙って母の愚痴や詰りを聞き、思うように動けない母に代わり家事をきりもりする。 動と静、明るさと陰鬱さ。彼らの心の内が読み取れるような映像。 だからだろうか。宮川一夫の映像に集中してみようと思って観始めたけれど、いつの間にか姉と弟がつむぎ出す情愛に深く入り込んで観てしまっている。 ![]() 監督とカメラマンは夫婦みたいなもんだ。カメラマンは女房。監督が意図する作品世界を映像で表現するのがカメラマン。そう語っていた彼の映像が、こうやって観るものを映像から作品世界に引きずり込んでいくんだろう。満たされない家庭の中で、どこまでも弟に一身に愛情を注ぐ姉の心情。その姉を慕い、まるで姉の愛情を逸らさせないようにするかのように、姉の愛情を試すかのように、世間に拗ねたように、乱行がエスカレートしていく弟。 結核で倒れた弟に付き添って療養所で寝泊りする姉。 真夜中に眼が覚めたその時間が怖いという弟に、引っ張ったらわかるわと、継母がお見舞いに持ってきた缶詰を包んでいたリボンで二人の腕を結んで眠る姉と弟。 そのリボンが動いた時、弟は危篤状態になった。 不自由な身体で見舞いに来た継母に胸をたたいて、「僕のね、ここが腐っているんだ。たたくとぼこぼこと空洞みたいに音がするんだ。」一年位前にも市川崑監督特集で劇場スクリーンで観たのに、病室でのシーンはやはり胸に迫ってくる。 弟の臨終を告げる医師の言葉に気絶した姉が目覚め、夢遊病のようにエプロンをつけ、心配して部屋に来た継母に「お母様は休んでらして」と言い置き、一刻も早くと弟の病室に向おうとするシーンで映像は突然に終る。 この後の、弟を喪った姉の心情、その後の姉を思わずにはいられないエンディングだ。 ![]() 不思議な女優だと思う。 日本人離れした顔立ちと雰囲気で、日本の町よりも、そのままパリかヨーロッパの街角にいる方がしっくり馴染んでいるようなエキゾチックな空気を持っている。 1957年にフランス人監督と結婚して本当にフランスに行ってしまって、離婚した後も、フランスと日本を行ききしていた。 彼女がいるだけで映像が垢抜けする。 どの映像も、どんな役をしても、役よりも岸恵子が前に出る。 そのくせ、どんな役をしても不思議と馴染んでいる。 勝気な役も、おっとりした役も、健気な役も… ![]() 2001年製作の市川崑監督「かあちゃん」を劇場で観た。 山本周五郎の同名短編小説を原作に、市川監督の妻でもある和田夏十さんが脚本化した作品。江戸を舞台に貧乏長屋で5人の子供を持つかあちゃん”おかつ”を描いた人情時代劇。 おかつを演じた岸恵子。 たしかパンフレットに、この日本の母の典型でもある”おかつ”は岸恵子しかいないと、そんなような市川崑監督のコメントがあったように記憶している。 「おとうと」の姉の勝気さと人情をそのまま受け継いだような「おかつ」のキャラクター。 フランスマダムでもある岸恵子と、日本の下町の貧乏長屋の肝っ玉おっかさん。 そぐわないようでいて、それがなぜかしっくりと馴染んでいた。 きっと根っこのところで人としての筋を一本きしっと持っている方なんだろう。 ![]() 宮川一夫が撮ったカラー映像の赤のように。 カラーだけれどモノクロを思わせるその映像にあって、決して沈まず際立ってあるけれど、それでいて映像から浮きだたず、不思議と馴染んでいる。
by mchouette
| 2009-12-11 11:42
| ■映画
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