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SHADOW OF A DOUBT
1942年/アメリカ/108分 監督: アルフレッド・ヒッチコック 物語の舞台はカリフォルニア州サンタローザ。 血なまぐさい事件とか強盗事件など間違っても起ころうはずもない、至ってのどかで平凡な田舎町といったところ。 この街に暮らす年頃のチャーリーは、こんな平凡すぎる毎日に退屈していたところに、大好きなチャーリー叔父さんが遊びにやってきた。叔父さんはお母さんのたった一人の自慢の弟。彼はこの平凡な家に都会の洗練された匂いを運んでくれる人。 同じ名前をもつ叔父と姪はとりわけ仲が良い。 叔父さんのことは何でも分かるの。私たち一卵性双生児のようね。 そういうチャーリーの大好きな叔父さんは、実は警察に追われる身。大金をもって姉の家に来たのも警察の目から逃れる為だろう。しかし、姉家族の前では、何の仕事をしているか分からないけれど都会で成功した羽振りの良い実業家という顔で接している。 そんなことを知らないチャーリーは大好きなチャーリー叔父さんにもっと近づきたくって仕方がない。だから叔父さんのもつ秘密めいた部分にも敏感に反応する。それは平凡な生活に飽き飽きしている彼女にとって大いなる刺激的な匂いでもあっただろうし、銀行員で推理小説マニアのお父さんの血を受け継いでいるところもあるのだろう。観察眼が鋭く頭の回転も早くって、それでいてお母さん譲りの情の深さもある女性がチャーリー。 ヤング・チャーリーを演じがテレサ・ライトがだんだんと知的でチャーミングな魅力をましてくる。ヤング・チャーリーが無邪気に発した言葉は、チャーリー叔父さんを秘密の部分を鋭く突き、彼をギクリとさせる。 叔父の魅力とも映った秘密が、チャーリーの中で次第に不審を抱き始め、それはある疑惑とつながり彼女を苦しめる。そして叔父のチャーリーにとっては、姉一家の中で一番可愛がっていた姪のチャーリーという存在が脅威の存在となってくる。ヤング・チャーリーの目はいつもチャーリー叔父さんに注がれ、そんなヤング・チャーリーの動きをチャーリー叔父さんもまた注視する。 極めて平凡で穏やかな家庭生活の中で、この二人の中で疑惑と殺意が螺旋階段を上っていくように徐々に渦巻いていく様がじっくりと描かれている。 作中でも新聞記事とか指輪といった小物が巧みに使われているけれど、私が印象的だったのは階段。チャーリーたちの部屋のある2階にいく階段は家の内と外の2つあって、その2つの階段の使い方がとても印象的だった。それから2階から居間を俯瞰する場面とか、町中でのロングショットとか、ありふれた映像のように見えるけど、ヤング・チャーリーの緊張が観る側に伝わってくるような、なかなか拘ったカメラワークだなっていう印象を強くもった。 のどかな田舎町の善良なごく普通の家庭が舞台という設定や、ヤング・チャーリーのように若くて世間ずれしていない女性が主人公というのもヒッチコック作品では珍しく、ちょっと異質な感覚があったけれど、これこそが、ありふれた日常に忍び寄る想像だにしない悪夢であり、しかも誰よりも信頼し大好きだった人が殺人犯かもしれないという驚愕の事実、これは怖ろしい。 そして叔父の正体を知ったら母の嘆きはと考えると、だれにも悟られずに、自分一人のところで塞き止めようとするヤング・チャーリーの必死な思いと緊迫感が伝わってくる。 最後まで叔父の正体が町の人々や家族には発覚せず、その死は悲しいけれど母の中で叔父は自慢の優しい弟として思い出に残るというこんな優しいラスト。そしてヤング・チャーリーにもチャーリー叔父を追跡していた若い刑事とのロマンスがこの物語に一輪の花の明るさを添えている。 健気なヤング・チャーリーをこよなく愛し、そして善良な人々と、平和な日常生活に注がれるヒッチコックのあたたかい眼差しが感じられる。こんな愛情と優しさが感じられる作品というのもヒッチコックの中では珍しいのではないかしら。初めて見たときはさほどには思わなかったけれど、観るほどに、こんな優しさは好きだなって思う。
by mchouette
| 2009-06-23 00:00
| ■映画
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