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STATE OF PLAY
2009年/アメリカ・イギリス/127分 at:梅田ブルグ 監督: ケヴィン・マクドナルド イギリスBBCのテレビドラマを、舞台をアメリカ・ワシントンDCにかえて映画化リメイクした作品。 深夜にドラッグ中毒の黒人少年が射殺され、通りかかったピザ配達のアルバイト青年も巻き添えを食って射殺された。そして、翌朝、国会議員スティーヴン・コリンズの下で働くソニア・ベーカーが出勤途中の地下鉄ホームから転落して死亡した。ワシントングローブ紙の記者カルは深夜に起きた射殺事件を追って現場に赴く。 一方、部下の死を知ったコリンズ議員は、民間軍事請負企業ポイント・コープ社と政界との癒着疑惑を追及する公聴会の席で、部下の死に対して涙を流したことから、亡くなった女性と議員との間に不倫疑惑が浮上する。そのスキャンダルをリアルタイムで配信しようとするワシントングローブ紙のWEB版記者デラ。 いわゆる足で情報を稼ぎ、裏を取っていく「ブンヤ」稼業の旧世代人類のカルと、飛び交う情報をまとめて即座にWEB上に流していく新世代人類のデラ。 編集長のキャメロンは、有能さは認めるけれど確証できるまで記事にしないジャーナリストの誇りをもつベテランで給料の高いカルよりも、読者が飛びつくネタを即座に配信していく新人で有能なデラを評価する。 企業に買収された新聞社に今求められているのは利益追求。売上を伸ばすこと。それだけとキャメロンはカルにわめき散らす。 ラッセル・クロウ演じるカルが、はねっかえりで新人のデラを強引に引き込み、彼女に記者として鍛え上げながら、黒人少年の射殺事件とソニアの転落死、そして大学時代ルームメイトだった友人コリンズ議員が追い込まれたソニアとのスキャンダルの3つの事件の背景にホワイト・コープが絡む陰謀をカルたちが嗅ぎ取っていく展開は、新たな事実が浮かび上がるたびに二転三転で、なかなかにスリリングで面白かった。 こんなシーンを観ていると、今更ながら、「バンテージ・ポイント」でも紹介した堤未果さんの著書「貧困大国アメリカ」で、いまやイギリスやアメリカの大手新聞は政権と癒着した大企業に買収され、骨抜きにされているという内容を思い出してしまう。新聞だけでなく1985~86年にはアメリカ三大テレビNBC、CBS、ABCの3局が一斉に大資本に買収されているという事実も記述されていた。 そしてなんでもかんでも民営化の下、戦争そのものが民営化され、武器も兵士調達も戦争請負企業が行い、業界ではイラクは「ゴールド・ラッシュ」と言われている現実があることも書かれていた。 作中でコリンズ議員が、公聴会で政権との癒着疑惑を糾弾しているホワイト・コープ社がまさにそれにあたるだろう。 企業資本と政権が癒着し、新聞社はその傘下に組み込まれ、報道の正義よりも利益追求を求められ時代にあって、公聴会で軍事企業の闇を糾弾しようとするコリンズ議員や、長年の記者生活で鍛えら抜かれた鋭い嗅覚で事件の裏に横たわるどす黒い陰謀に迫ろうとするカルを描いた本作は、とてもタイムリーなテーマともいえる。 そしてまた、記者が記事を書き、それが印刷されて新聞紙面として売られる前に、ネットでは中味だけが一人歩きするというこんな映像を観ていると、ネット社会が100年以上続いた印刷の世界を180度変えてしまったということが、今更ながらに実感する。 むさい格好で記者道一筋といったラッセル・クロウはなかなかの適役で、有能だけれど新米のデラに対するぶっきらぼうな思いやりなんか、色気など今回は用なしの二人のコンビぶりもみていて気持ちよかった。コリンズとその妻アンとカルは大学時代の友人で、アンとカルの関係も微妙で、コリンズに対する友情と、アンに抱いている愛情と、そして食いついたら離さないブンヤ根性と、その間でクロウがみせる複雑な感情などもなかなかに見せてくれる。 コリンズ議員にベン・アフレック。その妻アンにロビン・ライト・ペン。 陰謀が絡んだことを知ったコリンズがアンを伴い、ソニアについて話す決意をし、新聞社にカルを訪ねたコート姿の二人はなかなかのお似合いカップルだった。最近軟らかキャラ多かったベン・アフレック。今回はなかなかの硬派ぶり。 カルのボスで編集長キャメロン役ヘレン・ミレンも、ラッセル・クロウ同様にはまり役という感じ。 ラストの二人のやり取りに、これからはカルとは良き同志、良き相棒になっていくんだろうなって思わせる新人記者デラを演じたレイチェル・マクアダム。ヒラリー・スワンクをキュートで可愛くしたような女優さん。 麻薬がらみの殺人と思われた事件が、迫れば迫るほど、友人のコリンズをも巻き込む巨大な陰謀が浮かび上がってくる展開も面白く、なかなかに見せてくれるわ、どんなラストが待っているんだろうと大いに期待しながら見ていたのだけれど、最後の最後にある事実が浮上し、国家レベルの陰謀から急転直下、殺人事件の真相が明るみになるという個人レベルに収縮してしまった。苦渋を噛み締め真実を報道しようとするカル。 「イギリスのBBCテレビの人気ドラマを『ラストキング・オブ・スコットランド』のケヴィン・マクドナルド監督が映画化したポリティカル・サスペンス。あるスキャンダルをきっかけに、巨大な陰謀に巻き込まれていく記者たちの戦いの日々を描く。」確かに途中まではこの線だったんだけれど…… なんかラストで映画から途端に一話完結のテレビドラマに急転直下すり替わってしまったって感じ。 殺人事件の犯人逮捕は大事だけれど、ホワイト・コープが絡む癒着疑惑は解明されて、きちんと報道されるんでしょうね。 脚本も錚々たるメンバーで面白く観れたのだけれど、それがとっても気になりながら劇場を後にした。 この映画は、ジャーナリズムの衰退に対する警鐘だという指摘も多い。 だから、ラストのこんな締めくくりに、殺人事件の真相は報道できたけれど、新聞報道とWEB報道のすみわけなども語られていて、それはそれでいいのだけれど、それだけで良かった、良かったで終ってしまっていいのかい?っていささかの引っ掛かりを感じる。 監督は『ラストキング・オブ・スコットランド』のケヴィン・マクドナルド。『ラストキング・オブ・スコットランド』ではフォレスト・ウィッテカーがオスカー受賞したけれど、彼の演技がよかったからで(私は生理的に打めだったけど)……。どうもこの監督って押さえる視点が少しずれているような気がする。脚本にもよるんだと思うけど。
by mchouette
| 2009-06-04 00:00
| ■映画
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