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MA VIE EN ROSE
1997年 フランス・ベルギー・イギリス/88分 監督: アラン・ベルリネール XXが女の子で XYが男の子 わかる?女の子の心をもった7歳の少年リュドヴィックを演じたのは、これが映画デビューとなったジョルジュ・デュ・フレネ君。 ドレスを着て鏡の前で微笑む姿といい、仕草といい、大好きな踊りを踊るたおやかさといい、無理やり髪の毛を短く切られ涙ぐむ風情といい、それがとても自然で、女の子よりも女の子みたい。 彼がいわゆる「性同一障害」にも繋がるかもしれない、女の子への一途な願望を抱いた少年をとってもナイーブに演じていて、そんな彼をみるだけでもこの作品はとっても楽しめる。 リュドヴィックの夢は女の子になって、お隣のジェロームと結婚すること。ジェロームはパパの上司の息子で転入した学校でクラスメイトになった男の子。ジェロームもリュドヴィックをとっても意識しているような思わせぶりな素振りをみせている。 引越しパーティの席でも女の子の格好をして周囲を仰天させたり、ジェロームの亡くなった妹のドレスを着てジェロームと結婚式ごっこをしたり、ジェロームが王子様の役をやる学芸会で白雪姫役の女の子をトイレに閉じ込めて白雪姫になってしまったり、おかげで周囲の親たちの反感を買ってしまい、リュドヴィック転校の嘆願書がクラスの父兄全員から出されてしまい、これには両親はとてもショックを受ける。リュドヴィックのクラスメートは会社の同僚達で近所付き合いしている人たちばかりなのだから。 バスで1時間もかかる学校への転校。 サッカーチームでのいじめ。 リストラで真っ先に会社を解雇されてしまったパパ。 偽善の仮面を被った周囲の人たち。 必死でリュドヴィックを庇ってきたママはとうとう切れてしまい、隠していた本音をぶつけてしまう。 「みんな、あなたのせいなのよ。偽善はもうたくさん!」 ママやパパを困らせているのは悲しいけれど、それでもリュドヴィックの女の子になりたいという思いは変わらないし、どうしてそのことで、こんなに辛い思いをしなければならなくって、みんなが変な目でみたり、仲間はずれにされるのか、どうしても彼には理解できない。 リュドヴィックのたった一人の理解者はママのママであるおばあちゃんだけ。 ママが怒るのも、周囲のコミュニティからママ自身が弾き出されたことが許せないのだ。 ママがリュドヴィックに対して冷淡になっていくのに反して、パパは彼をあるがままに受け入れようと変わっていくのも興味深い。会社を解雇されたことにより、彼もまた「こうあるべきだ」に縛られて会社や社会の中で生きてきた無理している自分を発見したのだろう。 何を大切に考えなければならないのか? そんな問いを投げかける作品だろう。 最後はママが「リュドヴィックは大切なかけがえのない子ども」だと、そんな当たり前のことを改めて痛感するハッピーエンドで終る。こんな終わり方に物足りなさを覚える人もいるかもしれない。 リュドヴィックの女の子になりたい願望は一過性のものなのか、それとも「性同一障害」につながっていくのか、それについてははっきりと描いていない。 それはこれからの彼にとっては今以上に大きな問題として彼を苦しませるかもしれないし、家族もまた一つのハードルを越えなければならないかもしれないだろう。 自分の願望を素直に頑固に主張するリュドヴィックよりも、心配なのはリュドヴィックに関心を寄せるジェロームの方かも。一人娘を亡くし、息子を立派な男に育てるといきまき、リュドヴィックとつき合うなといった父親の下で、彼はどのように成長していくのだろうか。 人生なんて決まりきった答なんかなくって、大事なのはどんな風に生きていくかだろう。 だからこそ、こんな締めくくりのないラストはとても大事なことを示してくれていると思う。 オスカー俳優ショーン・ペンがサンフランシスコ市政執行委員でゲイの権利活動家ハーベイ・ミルクを描いた「ミルク」で主演男優賞でオスカーを獲ったショーン・ペンがスピーチで、「ミルク」のノミネートに抗議する団体が会場の外にいると語っていた。まだまだ「性」に関する偏見と差別は根強い。 アラン・ベルリネール監督は本作についてこう語っている。深刻な内容なのだけれど、リュドヴィックの大好きなテレビ番組「パムの世界」のお姫様と一緒に女の子になって空を飛んだり、大好きなジェロームと結婚式を挙げている夢を思い描いたり、そんなファンタジー的な映像が、どうかすると灰色の世界になってしまう物語をバラ色に仕上げている。 ●1998年ゴールデングローブ賞 最優秀外国語映画賞受賞
by mchouette
| 2009-03-11 23:14
| ■映画
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