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シネフィルで淀川長治氏の解説付でジョーン・クロフォードの代表作ともいえる「雨」とともに、淀川先生が一押しされていたのがベティ・デイヴィスの「痴人の愛」
「雨」と同じく原作はサマセット・モーム。「人間の絆」の一部を映画化した作品で、本作でミルドレッドを演じたベティ・デイヴィスの出世作といわれている。 <ネタバレ> OF HUMAN BONDAGE 1934年/アメリカ/82分 監督: ジョン・クロムウェル ベティ・デイヴィス(1908~1989)といえば、ジョーン・クロフォードと共演し、姉に対して愛憎うずまく妹を怪演した「何がジェーンに起こったか?」(1962)や「イヴの総て」(1950)、それからリリアン・ギッシュと老姉妹の役を演じた「八月の鯨」 (1987)が印象に強い。 「雨」のジョーン・クロフォード。そして「痴人の愛」のベティ・デイヴィス。2人は犬猿の中で、デイヴィスは「クロフォードが座った椅子には座りたくない」と言い放ったとか。そんな2人が共演した「何がジェーンに起こったか?」はそれだけでも話題になったが、それ以上に姉妹の長年の凄まじいばかりの確執と、捩れた愛情を描いた内容も、そして2人がみせる演技も凄まじいまでの迫力。1964年には「人間の絆」というタイトルでキム・ノヴァクがミルドレッドを演じ、何回かリメイクされているそうだが、淀川先生は体当たりの演技をみせたベティ・デイヴィスのミルドレッドを一押しされている。 片足に障害を持つフィリップ(レスリー・ハワード)は、パリで画家を目指すが、才能がないと知り画家の道を断念し、ロンドンで医学生となる。そんな彼が男性遍歴の華やかなウェイトレス、ミルドレッド(ベティ・デイヴィス)に夢中になり愛欲に溺れる。だが浮気性の彼女に翻弄された挙げ句に、彼女はフィリップを捨て別の男のもとへ。傷心の彼のもとへ妊娠し男に捨てられたミルドレッドが再び現れた。彼女への愛は醒めているフィリップだが彼女を見捨てておけず受け入れるが、そんなフィリップの優しさにミルドレッドは悪女の本性を顕わにし、裏切り続け、彼の医学生の道まで絶ってしまい、最後に彼の前に現れたミルドレッドは病魔に冒されていた。悪女が辿る哀れな末路。彼女のせいで度重なる苦杯をなめたフィリップだが、彼女の死によって、ようやく自分が人間の絆や障害者というハンディに呪縛されていたことに気づき、解放される。 どこにも救いようのない性根からの悪女ともいえるミルドレッド役など、どの女優も断ったがベティ・デイヴィスが引き受けたということで周囲は驚いたそうだ。 今となっては美しい女の役よりも悪女を演じるほうがはるかに演技者としては面白いのだろうけれど、当時は悪女のイメージがつくことを嫌がったのだろう。「イヴの総て」といい「何がジェーンに起こったか?」といい、ベティ・デイヴィスという女優は、美貌の持ち主なのだけれど、美貌以上に演技派女優として、アカデミー賞5年連続ノミネートという歴史ももつほど。 ![]() 邦題「痴人の愛」は谷崎潤一郎の小説「痴人の愛」と同名で紛らわしいが、内容的には重なる部分もある。 この映画をみていて、人は何かに縛られ、あるいは囚われ、そこから逃れ自由を求めるけれど、それがどうかしたらミルドレッドのように自らを破滅させることに突き進んだり、見方によったらフィリップの優しさや誠実さが、ミルドレッドを破滅させていったとも捉えられるだろう。 足に負った障害で苦い思いを味わってきたフィリップが、だからこそ、ミルドレッドから裏切られても不幸な境遇に陥った彼女を見捨てておけなかったのだろう。 そしてミルドレッドも、貧しい生まれに対するコンプレックスに縛られ、踏みつけられた子ども時代を送ってきたのではないだろうか。その裏返しとして、自分に言い寄る男たちの間を蝶のように飛びまわっていたのだろう。 愛を利用して今まで生きてきたミルドレッドは愛を信じられず、だからフィリップの自分への愛も永遠に続くと思われず、彼の愛を試すように裏切り続け、片方ではフィリップにふさわしくない女だという思いもあったのではないだろうか。愛してほしい気持ちを素直に出せず、子どもが駄々をこねて泣き喚くみたいに、フィリップの人生をめちゃめちゃにしてしまう、ミルドレッドのそんな悲しい性も憐れと思う。 「痴人の愛」 そんなミルドレッドの複雑な内面をベティ・デイヴィスは確実に演じきっていた。 人間の内面の捉えきれない部分を上手く描いているなって思う。 原作はサマセット・モームの自伝的作品でもあるそうだ。 「立派な役をやりたい」と懇願し、手に入れた「雨」の主人公サディという大役を、演じきったジョーン・クロフォードといい、誰もが敬遠した悪女の役を「私がするわ」と引受けたベティ・デイヴィスの心意気。そして2人ともそれぞれに代表作,出世作といわれるほどの演技でそれぞれに演じきった。役者としての自分の人生に「覚悟」のようなものさえ感じる。 そんな役者の迫力が作品に生命力を吹き込むんだろう。 「雨」そして「痴人の愛」どちらも1930年代の作品だけれど、最近の作品にはみられない迫力があり、とても斬新な冴えさえ感じる。 シネフィル・イマジカで紹介してもらった「雨」と「痴人の愛」。こんな素晴らしい作品に出会い、まだまだ知らない作品が過去には一杯あるんでしょう。だから映画はやめられない! ※このブログはトラックバック承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
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