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THE EDGE OF HEAVEN 2007年/ドイツ・トルコ/122分 at:テアトル梅田 監督: ファティ・アキン 監督であるファティ・アキン(Fatih Akın,1973年8月25日~ )を知ったのは、ベルリン国際映画祭金熊賞やヨーロッパ映画賞作品賞を受賞した「愛より強く(HEAD-ON)」(2004)だった。そして同時上映されていた「太陽に恋して(IN JULY)」(2000)も鑑賞した。 「トルコ系ドイツ人」という言葉も耳に新しい。 ドイツではトルコ移民の割合が急増しているということもこの作品の映画パンフレットで知った。 トルコの伝統音楽のメロディもなぜか惹かれる。 そして本作「そして、私たちは愛に帰る」 ファティ・アキンはドイツに移民してきた父と母の元、ドイツで生まれ育ち、社会にあってはドイツという文化の中で、そして家にあってはヨーロッパのキリスト教世界とは異なるイスラム世界の文化の強い影響に育ち、彼の中では常に異なる二つの文化が混在し、自我の目覚めともに自らのアイデンティティを問い詰めたとき、時には混乱を起し、鬩ぎあい、二つの文化の中で揺れ動いてきたのだろう. 彼の作品を通して、そんな彼の内面の葛藤を重ね合わせてしまう。 「太陽に恋して(IN JULY)」 ハンブルグで数学の教育実習生として暮らすダニエルは生真面目で冴えない青年。市場で「太陽を身につけた女性が運命の女性になる」という占いを一途に信じ、偶然出会った太陽のイラストがプリントされたタンクトップを着た女性を追って、ハンブルグからイスタンブールまで旅をするというロードムーヴィー。ドイツ映画でありながらイスタンブールというイスラムの匂いが濃厚に漂い、トルコ音楽もとても新鮮だった。 そして 「愛より強く(HEAD-ON)」 偽装結婚から始まったトルコ系ドイツ人の男女を描いた物語。 そして本作 「そして、私たちは愛に帰る」 英題は「THE EDGE OF HEAVEN:天国の淵」 国内に多くのトルコ系移民を抱えるドイツ。そしてEU加盟問題に揺れるトルコ。そんな両国の社会情勢を背景に、ドイツとトルコ、2千キロに渡ってすれ違い絡み合う3組の親子のそれぞれの葛藤と絆が静かなタッチで描かれている。 ドイツ系移民で男手一つで息子ネジャットを育てあげた年金暮らしのアリ。 息子のネジャットはドイツの大学で文学を教えている。 ドイツで売春婦をしながらトルコに残してきた娘を思うイェテル。 その娘アイテンは反体制活動に身を投じトルコを追われドイツに不法入国していた。 そんなアイテンと大学キャンパスで出会い彼女を匿うドイツ人のロッテ。そんな娘の無軌道な行動をとがめる母スザンヌ。 ドイツでアリの振るった暴力で死んでしまったイェテルの遺体の入った棺が静かにトルコの飛行機に引き渡される。 そして強制送還させられたアイテンを救おうとトルコに渡ったロッテは、ストリート・チルドレンの撃った銃弾で命を落とす。トルコからドイツへとロッテの棺は静かに故国へ引き渡される。 沈黙の中、空港滑走路内で静かに執り行われるこの二つのシーン。 そして棺が、娘アイテンを思うイェテルの魂、そしてアイテンを愛するロッテの魂が導くのように、ネジャット、ロッテの母スザンヌはトルコに向う。ロッテの意思を受け継いでスザンヌとアイテンの間に絆が生まれ、そしてネジャットはスザンヌを通して父の愛の深さを思い出す。 親の世代。 そして子どもの世代。 その思いは異なるだろうが、思いを抱いてかつて自分たちが辿った道を、子どもたちが辿っていく。 親の世代で挫折した道が、今また子どもたちが歩こうと、あるいは乗越えようとしている。 これからも幾世代もドイツとトルコの間を人々が行きかう中で、喪い、出会い、見出し、そして何かを求め待ち続ける。 言葉以上のもの、言葉では語りえない、それ以上のものを、映像から静かに見るものに訴えかけてくる。 それはファティ・アキンにとっても、もはや映像でしか語り得ないものなのだろうと思う。 彼の中でトルコという世界と、ドイツという世界、二つがゆっくりと化学反応を起こし、そして醗酵し……ネジャットが父を待ちながら見つめる海の静かに波打つ様のロングショット 「HEAD-ON(愛より強く)」の激しい葛藤を経て、ファティ・アキンがたどり着いた世界「THE EDGE OF HEAVEN(そして、私たちは愛に帰る)」なのだろうか。 ロッテの母スザンヌを演じ、彼女の親の愛を通してネジャットに再び父への愛を取戻させるハンナ・シグラ。 かつてファスビンダースが「下町のマリリン・モンロー」と呼び、「マリア・ブラウンの結婚」では見事な肢体を披露していた。強さを感じさせるハンナ・シグラが本作では、 「柔らかい手」のマリアンヌ・フェイスフルと重なる包容力を感じさせる柔らかい味を出していた。
by mchouette
| 2009-02-13 00:00
| ■映画
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