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DUEL
1971年/アメリカ/90分
ちょっと、ここんとこトーンダウンしていて映画にあまりワクワクしなくなっている状態。ワクワクするような映画が公開されていないからなのかもしれないし、ゴダール作品観て、今村昌平作品観ていたら、簡単にワクワクしなくなったところもあるなって思ったり……そんな時、なんも考えなくて、ボーッと映像観ているだけでも文句なく臨場感満杯のドキドキで、「観た!」っていう気にさせてくれる作品となると、マイシネマコーナー見ていて、これ!これ!って手を伸ばしたのは、やっぱ「激突!」 スピルバーグが弱冠25歳で制作した大傑作!(だと私は思う) 平凡なセールスマンであるデイヴィッド・マン(デニス・ウィーバー)は、商用のため車でカリフォルニアへ向かう途中、ハイウェイで道を阻んだ大型トレーラータンクローリーを強引に追い抜く。するとその直後から、大型トレーラーはマンの命を執拗につけ狙ってきた。必死に逃げるマンと追いかける大型トレーラー。 上手いよなって、つくづく思う。 ぐんぐん緊張感を高めていくシーンと、男がヘタッと座り込みたくなるほどの緩ませ加減、そこから突然、ハッと後ろを振り向けば「何時の間に…!」タンクローリーがニヤリと笑っているようにさえ感じさせる恐怖と緊張感。 タンクローリーがその長い車体をくねらせてマンの車の後をつつきまわる様は、逃げまどうネズミを追い詰めていく蛇にも似た、追い詰められるもの恐怖が伝わってくる。 伝わるどころか、デニス・ウィーバー演じるマンの、訳のわからん恐怖や緊張にすっかり同化して観てしまっている。 DVD特典でスピルヴァーグが当時を振り返って語る映像が入っていて、そこで彼は「今となっては、こんな作品は僕には撮れない。あの頃の僕はハングリーで貪欲だった。いまはお利巧になってしまった。」と。 よく分かってらっしゃる。 「しかし、あの当時の僕には『プライベート・ライアン』や『シンドラーのリスト』はつくれなかっただろう。だからプラスマイナス・ゼロだ」って言ってるけど、私としては「マイナス」に行ってるんじゃなかろうかと思う。 崖から土煙にまみれ、あたかも絶叫をあげながら墜落する2台の車をじっくりと映し出している映像も凄い。 一発勝負のこのシーン。現場にはカメラを3台設置して撮影に臨んだそうだが、そのうちの一人のカメラマンが、この凄まじいシーンを最後まで撮りつづけたそうだ。 山頂にへたり込んだ男のシルエットが、真っ赤な夕陽の光に静かに溶け込んでいくラストの映像なども、今までの彼の作品で最高のラスシーンではないかしらって思う。 スピルバーグ作品って、彼自身がきっと優しくっていい人なんだろうからだろうか、途中まで緊張が高まるんだけれど、妙に腰砕けしてしまうところがあるんだけれど、「激突!」のこの緊張と恐怖と、そしてほっとした瞬間のこのバランスなども絶妙で、そして衝撃の映像から静かな余韻の残るラストまで引っ張っていく。 25歳の荒削りの若さと、映画を目指すもテレビの世界で鬱屈した思いを抱えて、今に映画の世界へという貪欲なハングリーさが、何も考えず撮りたい映像に全神経を集中させて撮り上げたんだろうなって思う。 テレビ番組用の作品で撮影期間13日、オールロケで撮った作品。 当初10日間の撮影期間で、製作者サイドはロケで10日の撮影は無理だ、合成しろというのをリアリティを頑強に主張するスピルバーグは、なんとしても撮ってやると敢行したオールロケ。 現地に泊り込んでの撮影で、宿泊していた部屋の壁一面にカメラの位置、撮影シーンなど撮影計画を克明に記入したロケ現場の地図を張り巡らして臨んだという。 DVDの特典映像に当時の地図も紹介されていたが、建築設計図よりももっと詳細な図面だった。彼の頭の中では全体のビジョンが出来上がっていたんだろう。 スティーヴン・スピルバーグってやっぱり才能あるんだって、この撮影計画の地図をみて思った。 アメリカでは74分の単発テレビドラマとして放映されたのが評判をとり、劇場公開用に90分作品に編集し、ヨーロッパや日本で公開され、スピルバーグも「この作品で僕はヨーロッパに進出することができた」と語っていた。 原題「DUEL」は「対決」 これは邦題の「激突!」のセンスが光ってる。
by mchouette
| 2008-11-27 00:00
| ■映画
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