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1968年/今村プロ/174分/35mm/カラー ![]() 数十年ぶりの鑑賞になる。 11月1日に観たのだけれど、なかなか言葉にするところまでいかなかった。凄かったけれど、その凄みを言葉で安易に語れるか!っていう気持もあったのだろう。 数十年前には、表層的にしか観れていなかったろうと思う。雰囲気だけはかろうじて嗅いだというところだったろう。作品の世界に心臓の鼓動を打つようにどくどくと脈打つものの半分も受け止められてなかっただろうなと、こうして数十年ぶりに観てあらためて思う。 古代から、そして歴史の中に埋没させられてしまっている近代をも描き出し、現代社会にまで通じる、日本という国、日本人の生の姿を描ききったおどろおどろしい神話だろう。 現代文明と隔絶しているある南の島。 20数年前、暴風と津波が猛威を振るい、代々、島の神事を司る太家の神田に真っ赤な巨岩が打ち上げられた。島を取締る区長の竜立元(加藤嘉)は、兄妹相姦や密漁など島の禁制を破った太根吉(三国連太郎)への神罰だとして、根吉を鎖につなぎ穴を掘って岩を埋めることを命じる。根吉の父(嵐寛寿郎)もまた知恵遅れで出戻ってきた娘と父娘相姦の関係にあり、太家は島民から呪われた家族として忌み嫌われていた。 そんな島では、区長の提案で島民たちは田畑の全てを砂糖の原料となる唐黍栽培に切り替えていた。そして東京から技師(北村和夫)が開発工事の事前調査に訪れ、根吉の息子の亀太郎(河原崎長一郎)がその助手に任命されるが、それは調査は妨害するための区長の差し金だった。そして技師は亀太郎の妹で知恵遅れの娘トリ子(沖山秀子)をあてがわれ、トリ子との性に溺れ、島に骨をうずめる決心をするが、東京から帰京命令をうけ島を離れる。 巫女たちによるシャーマニズム。 巫女たちを束ね、巫女たちが告げる神の声によって村の政を仕切る区長。 島の掟と信仰と、村八分をつくることで繋がった島民たち。 人間の生と性が、極めて素朴で原始的な形で描かれている。 そして人間の源ともいえるこの生きること、愛し合うという人間の根源的な感情と欲望が、人を操る権力によって、社会という集団組織の中でいかに歪曲され、政治の場で巧みに利用されているかが描き出されている。 人類の創生ともなる男と女の原始の愛、差別と抑圧の構図、信仰と政治の関係あるいは癒着、土着と都市化、その中で迫害され、踏み潰されていく純なもの……。 飛行場開発で用地を売ることを拒む根吉は島民から更なる迫害を受け、誰も来ない二人だけの夢の島を目指して島を逃げ出した根吉とマツ。ボートに動物たちを乗せた姿は、やがて来る明日という日を待つノアの箱舟のノアのようにみえる。 しかし、村の掟を破った懲罰として二人を追う島民たち。そこには掟にたてついて村八分を恐れる根吉の息子の亀太郎も乗っていた。 二人のボートに追いついた島民たちは、一斉に面を被りオールで根吉を叩き殺し、マツを真っ赤な帆を張った帆柱に括りつけ見殺しにする。 面を被るという没個性あるいは没人間性。 集団と化した時の、人間の残虐さ、その暴力性。 これが組織という名の本性だろう。 そして愛という己の人間性を貫こうとするものの受難。 海の真ん中で繰り広げられるこのシーンは、壮絶と同時に神秘的な崇高ささえ感じる。 そして5年後、開発され観光地化された島に視察にお訪れた技師とその妻。 戻ると約束した技師の帰りを海を見詰め待ち続け、とうとう岩に化身したという「トリ子岩」にまつわる物語。 そして今も盲目の里徳里(浜村純)が蛇皮線を弾きながら、兄と妹が愛し合った島の昔々の物語を弾き語る。 今村昇平は、南の島の孤島を舞台に、原始的な人々の暮らしに網の目のように張り巡らされた社会と人間のメカニズムを生々しく描きだしている。 「盗まれた欲情」「果てしなき欲望」「豚と軍艦」「赤い殺意」「にっぽん昆虫記」「人類額入門」またドキュメンタリー「人間蒸発」と一貫して貫して人間、それも底辺や辺境に追いやられた者たちリアルに描き続けた今村昌平の一つの集大成的な作品といえるんではないだろうか。 そして、こんな作品を目の前にすると「映画の出来はシナリオ六分、配役三分、演出一分」という今村昌平の言葉の持つ重みが、胸の底まで響いてくる。 三国連太郎の父親役を演じた嵐寛寿郎が、その過酷な撮影現場に耐え切れず脱走を試みては連れ戻されたというエピソードは有名らしい。 ※このブログはトラックバック承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
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