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Belle toujours
2006年/ポルトガル・フランス/70分 監督:マノエル・ド・オリヴェイラ 出演:ミシェル・ピコリ、ビュル・オジエ、リカルド・トレバ、レオノール・バルダック、ジュリア・ブイゼル 現役映画監督では世界最高齢のマノエル・ド・オリヴェイラ。 99歳で撮った「夜顔」。 「昼顔」(1967)を撮ったルイス・ブニュエル監督にオマージュを捧げ、登場人物の38年後を描いた作品。 彼等の38年後なんて撮る必要があるんかい?と、劇場には観にいかなかった。観にいった友人たちの感想も「?」だったこともある。 でも私のお気に入りの監督でもあるオリヴェイラ監督がどんな風につくったのか気になるところでもあり、WOWOWで放映されたので観てみた。 ラストはこうきたか!と、オリヴェイラ監督の粋な企てに、こういうのがウィットに富んだっていうんだろうなって思ってしまう。これこそが本当にオマージュといえるだろうなって思う。 ただ、劇場でお金を払って観たとしたら、「あらっ、オリヴェイラ監督、こんな粋な計らいの映画をつくるなんて!」ってニヤリとして一人ほくそえむことができたかどうか……微妙ではある。 ただ、今回のWOWOW放映をみて、オリヴェイラ監督が描き出したこの繊細な映像をスクリーンの広がりの中で観たいという気はしている。 原題からしてなかなかの曲者ぶりを発揮している。 「夜顔」の原題は「Belle toujours」、「いつまでも美しい」という意味。 そして「昼顔」の原題は「Belle de jour」 昼間しか仕事(売春)ができないセヴリーヌにつけられた名前で「夜の女」 (belle-de-nuit) と植物の「昼顔」 (belle-de-jour) をかけて名づけられたもの。 発音も一字違いというこの拘りと懲りよう! ローレンス・フォスター指揮、グルベキアン管弦楽団による、ドヴォルザーク「交響曲8番」の演奏会シーンで始まり、ロングショットで撮られたエッフェル塔の青いサーチライトが光線の下に広がるパリの夜景も素晴らしい。 演奏会で偶然みかけたセヴリーヌを追って入ったバーで、バーテンダーと交わす会話。 客たちのはなす秘密、嘘、裏切りを聞かされ続けるバーテンダーは、店の常連の娼婦たちを「彼女たちこそ天使に見えてくる」とピコリに話す。 ピコリとバーテンダーがカウンター越しに交わす会話にもオマージュがみてとれる。 そしてラストの再会のディナーのシーン 何が真実で、何が嘘なのか…… こういう作品を撮ろうとすることそのことが、オリヴェイラ監督の豊かさであり、心の贅沢といえるんだろうと思う。 会話、役者の仕草、映像の一つ一つにオリヴェイラ監督の神経が隅々まで行き届いた細やかさが感じられる。 こんなウィットに富んだ贅沢さを素直に味わうのもいいのではないでしょうか。 かつて「昼顔」ではカトリーヌ・ドヌーヴが演じたセヴリーヌをビュル・オジエが演じていたのにはそのイメージに違和感を感じたけれど、なんといっても『昼顔』でもキー的な存在だったアンリ・ユッソン役を演じたミッシェル・ピコリ。81歳という高齢のピコリを担ぎ出したあたりはさすがオリヴェイラ監督。 オリヴェイラ監督「家路」(2001)などでも味わい深い初老の役者を演じていた。 リヴェット監督の「美しき諍い女」(1991)では鉛筆からクロッキーそして絵筆へと幾度も幾度も習作を続ける演技で、画家が一枚の絵を生み出す時の濃密なエネルギーと凄みと緊張の極みを演じあげたミッシェル・ピコリ。本作でも一筋縄ではおらぬ彼の存在なくしてはこの作品はなかっただろうと思う。
by mchouette
| 2008-10-25 00:00
| ■映画
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