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LES AVENTURIERS
1967年/フランス/110分 監督: ロベール・アンリコ 原作: ジョゼ・ジョヴァンニ 脚本: ロベール・アンリコ /ジョゼ・ジョヴァンニ/ピエール・ペルグリ 撮影: ジャン・ボフェティ 音楽: フランソワ・ド・ルーベ 出演: アラン・ドロン/ リノ・ヴァンチュラ/ ジョアンナ・シムカス/セルジュ・レジアニ 先日、NHK・BSで放映されていて録画したままだったのを、やっとこの日曜日に観れた。 いつごろ観たのか記憶が定かではないけれど、少なくとも数十年ぶりの鑑賞。 冒頭でジョアンナ・シムカスがスクラップ工場を歩くシーンで流れるフランソワ・ド・ルーペ作曲のあの口笛のメロディを聞くと、懐かしさが甦ってくる。映像は断片でしか残っていないけれど、このメロディーは記憶に刻み込まれていて、メロディを聴くとあの頃の空気までが甦ってくるような気がする。思ったことを書き綴ってみました。 この映画を青春映画として忘れがたいという方も多い。 この映画を観た当時の私も青春のど真ん中にあった頃と思うが、フランス映画はどこまでもお洒落で、大人のエスプリが溢れていて、当時の私には、「明日に向かって撃て!」や「俺たちに明日はない」に感じる身近な存在よりも憧れに近い存在だったように思う。 作中のジョアンナ・シムカスのスカーフの使い方とか、コートの何気ない着こなしとか! そして、この映画には孤独を知った者たちが描かれている。 孤独に生きている者たちのつかの間の煌きを描いた映画だと思う。 そんな彼らの孤独と煌きの象徴が海に浮かぶ要塞島だろう。 少なくとも、自動車産業に風穴をあけようと新型自動車の開発を夢見るローラン(リノ・バンチュラ)と、自動車のスクラップを材料に新しいアートに挑むアーティストのレティシア(ジョアンナ・シムカス)は孤独を味わってここにいると思う。青春とは、孤独の味を知らないか、あるいは孤独を怖れて、孤独から逃げるように突っ走るものではないだろうか。だから描かれている孤独さえも甘美なメロディで酔わせてくれる。 そして、孤独と向き合えた時、若者は大人になることができるのだろう。 そしてそんな大人になってもなお、人からみたら「バカげた夢」に自分の人生を賭けている。 それがこの映画。 当時の私にとっては、だから「孤独を知っている大人の映画」という印象で、この映画を捉えていたのかもしれないなと、再見してみてそう思う。 この映画の味を知るには当時の私は青すぎた。 この映画の中のアラン・ドロン演じる飛行機野郎のマヌーのように、自分しか見てなかったように思う。 スクラップを売ってくれというレティシアに門前払いを食わせるも、「待っているわ。時間はいくらでもあるから」というレティシアの言葉に、ローランは自分と同じ孤独の匂いを彼女の内に嗅ぎ取ったのではないだろうか。だから、トラックにふと彼女を乗せてしまった。 そしてマヌーは、若くて美人のレティシアに若者らしく心をときめかす。 個展開催の作品制作の作業場として、レティシアはローランの工場に押しかける。ガスバーナーをもって鉄のスクラップと格闘するレティシアには、女だからといって女性に対する気遣いなど彼女は意に介さない。野郎が3人といった仲間意識で友情が育まれていく。 彼らにとって夢を叶えられるか起死回生の冒険の旅。 海上で3人きりの生活。 子どもに戻ったようにはしゃぐ無邪気な3人の姿に、海の青と太陽がまぶしく輝く。 沈んだ飛行機を操縦していたパイロットが彼らを追いかけて来て、4人は海底から首尾よく財宝を引き上げる。「俺たちは一緒でいい。」そういうマヌーの言葉にローランもレティシアもそれぞれの取分を一つにする。3人の間に築き上げられた友情、彼らの人間性がとてもよく分かるシーンだ。 レティシアはそのお金で、海に浮ぶ家を買ってそこで静かに絵を描いて暮らすという。 「君と一緒に暮らしたい。そんな大きな家で独りで暮らすつもりかい?」マヌーは愛を打ち明ける。 「もちろんよ。3人で暮らすんだから」そう答えるレティシアにマヌーは躊躇いをみせる。 そしてレティシアはローランと操縦室にいる時、「あなたと一緒に暮らしたい」とローランに気持を打ち明ける。「マヌーは?」問い返すローラン。 そんな二人の姿を複雑な目でみつめるマヌー。 3人のこんな台詞に3人の内面、性格それぞれの位置関係が見事に表現されている。 ハンサムで女性にもてて、飛行機の腕も一流で、孤独の何たるか、人の寂しさの心の奥まで知らないマヌーが3人の中でいちばん若い! しかしマヌーたちの行動を付狙い財宝を横取りしようとする一味船に乗り込んできて、銃撃戦となりレティシアは銃弾に倒れる。 レティシアに潜水服を着せ、3人は海中に潜りレティシアを葬る。潜水服を着たレティシアの遺体はゆっくりと海底に沈んでいく。それをみつめるローランとマヌー。 「ボーン・スプレマシー」でジェイソン・ボーンが、暗殺者に撃たれた恋人マリーを水中に葬るシーンがとても印象的だったけれど、グリーングラス監督は恐らく「冒険者たち」のこの悲しく感動的なこの別れのシーンをジェイソン・ボーンで再現したのだろう。 2人はレティシアの遺品を届けに、彼女の生まれ故郷を訪れる。 そして海上に浮かぶ要塞の島を見つける。 レティシアが語っていた海に浮かぶ家。 ローランはこの島にとどまり、陸には住めない飛行機野郎のマヌーはパリに戻る。 しかしパリに戻ったマヌーは、初めて孤独感を味わう。 心の中にいいようのな寂しさが彼を襲う。 ギャンブルに無為に時間を過ごし、昔馴染みの恋人の部屋に行っても、マヌーは黙ってその部屋を後にする。 レティシアやローランたちと過ごした煌くような時間。 そしてレティシアの生まれ故郷の島にローランを訪ねる。 ローランは海に浮かぶ要塞を買い取り、ホテル兼レストランに改装し、マヌーはそこでパロットとして客の輸送をするという計画を立てていた。 しかし執拗に彼らが引き上げた財宝を狙う暗殺者たちがマヌーを追って島にわたってきた。 激しい銃撃戦の末、マヌーは銃弾に倒れる。 「レティシアが言ってた。お前と暮らしたいって。」虫の息のマヌーにローランは告げる。 「嘘をつけ」笑ってローランを見るマヌーはローランの熱い友情に抱かれて微笑みながら死んでいった。 しかし、残されたローランの孤独を思うとやりきれない。 一人パリに戻ったマヌーのあの淋しい後ろ姿がローランに重なる。 そしてこんなラストをみると、この映画は、やはり男同士の友情を描いた作品だとつくづく思う。 女同士なら悔しいけれどこういう絵にはならないだろうな、と思う。 夢とロマン。飛行機。カーマシン。男と女。友情。凱旋門。挫折。孤独。紺碧の海。照りつける南国の太陽。船。スキューバー・ダイビング。財宝探し。島。銃撃戦。愛するものとの別れ。……映画の魅力的な要素がこれだけふんだんに盛り込まれていたんだなとあらためて思う。 それが3人の夢を追いかけるロマンという爽やかさに支えられ、ラストの悲しくやるせないシーンまで、骨太ながら流れるようにつながっていく。 マヌー役のアラン・ドロンは32歳、船の上での無精髭の彼がとても伸びやかで新鮮。役者として脂の乗っていた頃でしょう。そして味のあるローランを演じたヨーロッパ・チャンピオンにまでいったボクサー出身のリノ・バンチュラ。そしてマヌーとローランの2人の男と、愛と友情で結ばれ, 、2人のマドンナ的存在ともいえる レティシアを演じたジョアンナ・シムカス。(彼女はその後シドニー・ポワチエと結婚し映画界から引退)。この主役3人の魅力 そしてその魅力をスクリーンに存分に引き出したロベール・アンリコ 。監督デビュー作である「ふくろうの河」でその見事な手腕を発揮した彼ならではの演出だろう。そしてフランソワ・ド・ルーベの音楽。11年間の獄中生活の実体験を描いた映画「穴」の原作者であり、 「父よ」で死刑になる自分を救ってくれた父の愛を描いた作家であり映画監督でもあるジョゼ・ジョヴァンニの原作。 これらが見事に融合して、気骨があって、純粋で、甘さはないけれど優しさのあるこんな素敵な作品が生まれたのだろう。 でもこの映画は、女性よりも、男性の方が堪らない憧れと魅力を感じさせる映画ではないかしら。ラストシーンをみて、これは強烈に男の映画だわと思った。 レティシアが暮らしたいといった海に浮かぶ島は「Fort Boyard (フォール・ボワヤール)」とよばれている要塞島。 ロベール・アンリコの監督デビュー作である「ふくろうの河」は、「フクロウがいる風景~映画の中の梟を探して…」という記事で紹介していたものを再掲します。 ■「ふくろうの河」 LA RIVIERE DU HIBOU 1961年/フランス/93分 監督:ロベール・アンリコ 出演:ロジェ・ジャッケ/アン・コネリー 南北戦争時のアラバマを舞台に、一人の兵士の眼からみた戦争、少年の眼からみた戦争、そして絞首刑の男。3部構成で戦争を描いた作品。幻想と追憶を見事に融合させ、モノクロのあくまでも幻想的で静寂ともいえる映像で戦争の悲劇を描いた作品です。最後の編、絞首刑になる男の物語の衝撃的なラストシーンが物議をかもしたとのこと。とても幻想的な幸せな映像から一瞬にして画面が変わり、思わず身体が前に……この衝撃が全てを語っている。森が主な舞台なので梟がどこかにと思ったのですが、一度も出てきませんでした。森の中の生き物達たちのなき声や姿も映像で捉え見事。未見の方は是非観てほしい一作。「冒険者たち」のロベール・アンリコ監督は本作が監督デビュー作でしょうか。 短編賞は絞首刑になる男を描いた編(26分)だと思います。
by mchouette
| 2008-09-16 00:00
| ■映画
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