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I HIRED A CONTRACT KILLER
1990年/フィンランド・スウェーデン/80分 アキ・カウリスマキにとって初めての海外製作の作品。 弱者をどんどん切り捨てていった、鉄の女といわれたイギリス首相・マーガレット・サッチャー政権によって推し進められた経済政策サッチャリズム末期の1990年を背景に、移民が多く住むイギリスのイーストエンドを舞台にした物語。 舞台をホームグラウンドから移し、役者も違う国の、となれば往々にして違う要素に引きずられちぐはぐな作品になることもよくあるのだけれど、贅肉をとことん削ぎ落としたシンプルな映像に、カウリスマキ自ら選曲したビリー・ホリディはじめ50年代のR&Bが見事に映像と融合した作品に仕上がっている。 カウリスマキの軸足はゆるぎなく、逆に主人公を演じたジャン=ピエール・レオはカウリスマキという新しいフィンランドで息を吹き返したのではないかしら。 誰からも愛されずフランスで居場所をなくしロンドンに移住してきた男だが、民営化の嵐の中、外国人ということで真っ先に解雇され、とうとう自らの人生に絶望し自殺を試みるがことごとく失敗し、なけなしの金をはたいて自らの殺人をプロの殺し屋に依頼する。しかしふと入った酒場でバラを売っている女性と出会い一目惚れした彼は生きる希望をもち、今度は依頼した殺し屋から必死に逃げ回るはめに……。殺し屋も癌で余命幾許もなく、殺しを請け負った金を家族に遺すため殺しの完遂に躍起となる。 人生に失望した主人公にジャン=ピエール・レオ。彼はシネフィルのカウリスマキが崇拝してやまない役者で、カウリスマキの念願かなってのレオの出演というところだろう。 マーガレットを演じたのはイギリスの女優マージ・クラーク。素敵な方です。 アキは最初からこの二人を主人公に想定して脚本を書いていたそうだ。 男が如何に世間から疎外された存在であるか、極めて単純な構図なれど男の孤独なやるせなさが可笑しみをもって行間から伝わってくるこの悲喜劇!。 不器用さといい、殺し屋と男がはたと向き合うシーンで流れる情感といい、フィンランドといおうかアキ・カウリスマキに流れるメンタルな部分は、なぜにこうも日本人の私に通じるものがあるのだろうか。 ……………………………………………………………………………………………… ふと気がついたことだけれど、カウリスマキ作品で「神」の名を口にした人間が登場する作品ってあっただろうか? 誰も神にすがったり、神を呪ったり、神に誓ったりしたシーンってなかったような…。人間が引き起こした悲喜劇を引き受けるのは人間以外の何者でもない。16歳から教会にいってないというカウリスマキ。<ちょっと、どうでもいいような私の独り言> だけど、カウリスマキは「レニングラード・カウボーイズ/モーゼに会う」で旧約聖書の「出エジプト記」をベースにし、聖書と共産党宣言を対峙させるといった無謀なジョークも織り交ぜ、3大陸にまたがったロードムーヴィーを撮影したが、今までの彼の評価がご破算になるくらいに滑ってしまい、本人も映画は辞めようと本気で思ったくらいの痛手を追ったそうだ。 この後、カウリスマキの音楽映画でカウリスマキ作品日本初公開作である「レニングラード・カウボーイズ・ゴー・ツー・アメリカ」、おおこけした「レニングラード・カウボーイズ/モーゼに会う」そしてベルリンの壁崩壊後、レニングラード・カウボーイズと旧ソ連交響楽団の共演ライブ「トータル・バラライカ・ショー」まで記事アップしていきます。 監督: アキ・カウリスマキ 製作: アキ・カウリスマキ 原作: ペーター・フォン・バッグ 脚本: アキ・カウリスマキ 撮影: ティモ・サルミネン 出演: ジャン=ピエール・レオ/マージ・クラーク/ジョー・ストラマー/セルジュ・レジアニ
by mchouette
| 2008-07-03 00:00
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