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PRET A PORTER
1994年/アメリカ/133分 ロバート・アルトマン監督「プレタポルテ」を久々に鑑賞。 パリ・コレを舞台に華やかなファッション業界の内側、デザイナー、モデル、ファッション雑誌の編集者たち、カメラマン、取材陣たちの生態をシニカルに描いた作品。 ちょっとフェリーニ・テイストも感じてしまうような百花繚乱、絢爛、狂乱の舞台にアルトマンの遊び心とパロディがいっぱいの大いに楽しめる作品(と私は思うのだ)。 実際のコレクション会場にカメラが入っての撮影で、「仲間を蹴落として前に進む」ファッション・レポーターを演じるキム・ベイシンガーが、私の舞台よといわんばかりにマイクを持ってインタビューに飛びまわる。助手のキアラ・マストロヤンニが彼女にぴたりとへばりついている。 マイクを向けられるのは、ジャン=ポール・ゴルチエ、ニコラ・トラサルディ、クリスチャン・ラクロワ、ソニア・リキエル、三宅一生、クロード・モンタナ、ジャンフランコ・フェレなどのデザイナーなどなど本物のデザイナーたち。ベイシンガーの百戦練磨の堂々のレポーターぶりはさすが。 他にナオミ・キャンベル、ヘレナ・クリステンセン、クラウディア・シファー、クリスティー・ターリントン、カーラ・ブルーニなどのスーパーモデルたちも出ているし、なんといってもイタリア、フランス、イギリスなどから往年の錚々たる俳優たちもこぞって出演しており、その個性豊かな顔ぶれも嬉しい。 こんな中で繰り広げられる人間ドラマ。 ファンション業界のドンにジャン=ピエール・カッセル。その妻がソフィア・ローレンで、愛人がデザイナーのアヌーク・エーメ。そしてソフィア・ローレンが10代の若さで結婚した相手がマルチェロ・マストロヤンニ。 結婚したその夜にマストロヤンニは共産党員としてモスクに行ったものの、翌日スターリンが亡くなり政変があり時代が変わり、数十年間、連絡もとれないままロシアでしがなく仕立て屋になっているという設定が面白い。そして愛する妻がカッセルと結婚したことを知り方策を尽くしてロシアからローレンに会いにフランスにやってくるというもの。 二人が共演したヴィットリオ・デ・シーカ監督「ひまわり」(1969)の逆バージョンのようなこんな設定に思わずニヤリとしてしまう。そして「ひまわり」ではローレンは愛する男の消息を必死に探し生活に疲れた女の顔で、ロシアで若い女性と家庭を持っていた夫のマストロヤンニの前に現れる。本作ではディオール・ファッションに身を包んだ極上セレブな女性で登場させているのもソフィア・ローレンに対するアルトマンの敬意だろうか。 そしてソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニ。 再会した二人の絡みのシーンは、黒いレースの下着姿のセクシーなソフィア・ローレンと吠えるマストロヤンニは、デ・シーカ監督の「昨日・今日・明日」(1963)そのまんま。 30年前のこんなシーンを演じさせたアルトマンもさることながら、堂々と演じた二人も凄い役者だと思う。 そして、後ろ盾の愛人に死なれ、息子のルパート・エヴェレットは己の生き残りのために、母親のブランド・ロゴを勝手にイタリアの靴メーカーに売りわたしてしまうし、デザイナー・シモーヌを演じるアヌーク・エーメはデザイナー人生の到達点として全裸でモデルたちに舞台を歩かせるという前代未聞のショーをやってのける。そして会場は賞賛の拍手で包まれる…。 とうとうベイシンガー演じるレポーターは引きつった顔で、「何がどうなってるの?私何言ってるの? 裸で練り歩くのがファッション?! 私もういや、たくさん!」とマイクを投げ捨て会場を後にし、マイクを貰った助手のキアラが言葉を引継ぐ。 「一番大切なのは、何を着るかではなく、服をどう着るかだ」と…。 とどめは、芝生が広がる陽光の下で裸の幼児たちを撮影するカメラマン。 バックの広告パネルには「トラサルディ あるがままに…」 おもいっきりファッション業界を皮肉りコケにし、色が氾濫する実際のショーも楽しめるし、女装趣味あり、ゲイありも楽しいし、こんな映画はアルトマンならではと思うのだけれど、今回記事にするにあたり映画情報をみてみると意外にこの作品は酷評されている。 ブログの映画感想をみても、最後の全裸のショーや出演陣の豪華さを興味本位に取り上げた記事が多いし、 アルトマンは夫人につきあってパリ・コレのショーを見て「これはサーカスだ。ぜひとも映画にしなければ」と思い、あたためていた企画だとか。 泥臭いまでのタッチで群像劇で人間を描いてきたアルトマン作品のなかで、こんな華やかで楽しい雰囲気は異色に映るかもしれないけれど、ファッションという虚構性、生態、そして流行とはメディアによってつくりあげられるという構図をしっかりと浮き彫りにし、かつ華やかな世界と祭り気分で楽しませてくれて、マストロヤンニとソフィア・ローレンの久々の共演も嬉しいし、アルトマンも大いに遊んだ作品でないかしらと思う。 観る方もこの楽しさを大いに満喫すればいいと思うのだけれど…。 ローレン・バコール演じるファッション界の重鎮。 これだけの人間をよくぞ揃えたものだと、あらためて感心してしまう。 久しぶりにみて、当たり前だけれどみんな若い!一堂に彼らに会えて、なんだか同窓会的な気分で嬉しくなってしまった。 監督: ロバート・アルトマン 製作: ロバート・アルトマン 脚本: ロバート・アルトマン/バーバラ・シャルガサー 撮影: ピエール・ミニョー/ジャン・ルピーヌ 音楽: ミシェル・ルグラン 出演: マルチェロ・マストロヤンニ/ソフィア・ローレン/ジャン=ピエール・カッセル/キム・ベイシンガー/キアラ・マストロヤンニ/スティーヴン・レイ/アヌーク・エーメ/ルパート・エヴェレット/ロッシ・デ・パルマ/リリ・テイラー/ウテ・レンパー/フォレスト・ウィッテカー/リチャード・E・グラント/ジュリア・ロバーツ/ティム・ロビンス/ローレン・バコール/ライル・ラヴェット/トレイシー・ウルマン/サリー・ケラーマン/リンダ・ハント/テリー・ガー/ ダニー・アイエロ/ジャン・ロシュフォール/ミシェル・ブラン/フランソワ・クリュゼ/サム・ロバーズ 登場するブランド:イッセイ・ミヤケ/イネス・ド・ラ フレサンジュ/ブルガリ/トラサルディ/ジャンフランコ・フェレ/ソニア・リキエル/クリスチャン・ディオール/シャルヴェ/ジャン=ポール・ゴルチエ/ クリスチャン・ラクロワ/クロード・モンタナ
by mchouette
| 2008-06-05 00:23
| ■映画
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