by mChouette 検索
カテゴリ
全体 ■映画 =映画:あ行 =映画:か行 =映画:さ行 =映画:た行 =映画:な行 =映画:は行 =映画:ま~わ行 ■映画・雑記 ■ドラマ ■展覧会・コンサート ■一冊の本 ■徒然なるままに… ■美味しいもの ■アウトドア・旅 ■勝手にバトン ■ご挨拶・お知らせ 未分類 最新の記事
その他のジャンル
|
CELINE ET JULIE VONT EN BATEAU
1974年/フランス/192分 この映画の、引きずり込まれるような面白さって、一体なんなんだろう。 「物語りはこのように始まる」 人をくったようなイントロで始まり、「しかし翌日の朝は…」~「そして翌日は……」~と日に日に状況が変わっていく。辻褄合わせしたり、ストーリーを追ってみていると、置いてきぼりを食ってしまうと思う。でも一旦この摩訶不思議で突飛な展開は乗ってしまえば、この面白ラヴィリンスの世界は堪能できる。これは観ないと分からない。 哲学者の故ジル・ドゥルーズ氏が、ジャック・タチと並ぶフランス・コミック映画の最高傑作、と評したそうだ。 そしてこのように始まるという物語の始まりは、公園のベンチ.。ジュリーは本を読んでいる。タイトルは「魔法の本」。ちょっと気になったのは、チープでキッチュなファッションに身を包みベンチに座っている女性。セリーヌ。おもむろに立ち上がり足早に歩き出す。スカーフがはらりと落ちて、それに気づいたジュリーがセリーヌの後を追いかけるも彼女は知らん顔。道路を横切り、市場の雑踏をかき分け、高低差の激しいパリの街。セリーヌはピークトラム斜行エレベーターに、スカーフもって追いかけるジュリーはひたすら階段を駆け上る。ジュリーがセリーヌをひたすら追いかける。こんなシーンが15分から20分くらい続く。その間せりふといえばジュリーが発する「ヘイ」一言だけ。 冒頭、ジュリーが真面目な顔で本を読んでいるところや、セリーヌが気取ってカバンを探し回る様子に、見ている方は、いやでも想像力をかきたてられる。こんな本読む彼女って、こんなキッチュなファッションを気取ってきている彼女って何者? 何考えてる? これから何をする?…… そして、パリの街をセリーヌを追いかけるジュリーと一緒になって、観ているものもパリの街を歩いているような気になってくる。 「しかし、翌日の朝になると」 この辺から物語は、唐突に動き出し、突然場面が変わるし、奇妙な展開を見せ始める。ジュリーとセリーヌの奇妙な出会いと共同生活、夢と現実が捩れてつながり、互いに分身のようになったり、キャンディを舐めて同じ夢を見て、いつの間にか夢の中の一人の少女の命を助けにいくセリーヌとジュリーの冒険劇になったり……。 ミステリアスな部分がちらちら見えて、次は? どうなるの? ひょっとしたら…… すっかりジュリーとセリーヌのペースに引きずり込まれてしまってる。 そして、鮮やかな転換のラストシーンには、あっ!と、呆気にとられ、思わずニヤリと嬉しくなる。 物語はこんな風に始まり、そして人生の時間は、こんな風に繰り返される……。 このラストで、この長尺作品、思わずもう一度始めから見ようと思う誘惑に駆られる。 こんな物語のベースには、セリーヌにしろ、ジュリーにしろ、現実の中で、過敏なほどの不安感や疎外感を抱えて生きている二人に共通するダークな世界があって、それが愛と欲望に満ちた大人たちに無垢な少女が殺されるという夢の共有とか、互いにすりかわるといった不条理な世界につながるのだろうけれど、そういうことは観終わってからの話として。 セリーヌ役のジュリエット・ベルトと、ジュリー役のドミニク・ラブリエの二人の生き生きとした演技を楽しみたい。芝居がかったシーンですら妙にリアル。二人の絶妙なコンビネーションが醸し出す雰囲気が、その突飛ささえも観るものに妙に納得させてしまう。この二人、脚本にも参加し、リヴェット監督の演出と、彼女達の即興の演技が、こんな魅力的な作品を生み出したんだろう。 そして二人の夢に出てくる家の中で繰り広げられる愛憎ドラマも面白い。 まさに不思議の国のアリス状態の192分。 ホテルの宿泊名簿に「魔術師」と書くようなちょっとおかしなセリーヌ役を個性的に演じたジュリエット・ベルト。ゴダールの「彼女について私が知っている二、三の事柄」でデビューしカルト的人気を得、またジャック・リヴェット作品の常連ともなり、本作ではジュリー役のドミニク・ラブリエともども脚本にも参加し、彼女のセリーヌ役は絶賛され、70年代半ばから監督として活動したけれど80年代半ばより癌を患い1990年1月に死去したそうだ。こんな個性的な演技みると惜しい。 監督: ジャック・リヴェット 製作: バルベ・シュローデル 脚本: ジュリエット・ベルト/ドミニク・ラブリエ/ビュル・オジエ/マリー=フランス・ピジェ/ジャック・リヴェット 撮影: ジャック・レナール 音楽: ジャン=マリー・セニア 出演: ジュリエット・ベルト ドミニク・ラブリエ マリー=フランス・ピジェ バルベ・シュローデル ナタリー・アズナル ビュル・オジエ
by mchouette
| 2008-04-10 00:00
| ■映画
|
ファン申請 |
||