by mChouette 検索
カテゴリ
全体 ■映画 =映画:あ行 =映画:か行 =映画:さ行 =映画:た行 =映画:な行 =映画:は行 =映画:ま~わ行 ■映画・雑記 ■ドラマ ■展覧会・コンサート ■一冊の本 ■徒然なるままに… ■美味しいもの ■アウトドア・旅 ■勝手にバトン ■ご挨拶・お知らせ 未分類 最新の記事
その他のジャンル
|
ELIZABETH: THE GOLDEN AGE
2007年/イギリス/114分 at:TOHOシネマズ梅田 25歳で、突然にイングランド国王の座に担ぎ上げられたエリザベス女王を描いたシェカール・カプール監督の前作「エリザベス」(1998)で「その瞳が、唇が、その存在が革命<ヴァージン・クイーン>25歳」と謳わたエリザベス女王も、本作「ゴールデン・エイジ」ではすでに50歳に……。 監督は「エリザベス」と同じくシェカール・カプール監督。エリザベス女王には前作に引き続きケイト・ブランシェット。 前作「エリザベス」では、イングランドと結婚する決意をした25歳のクィーンを描いたけれど、本作では、一人の女であることへの渇望や、暗殺の陰謀に対する怖れや不安、王座につくものの孤独感の中で、女王よりも個の感情の中で悶えるエリザベスに焦点をあて、そんな内面の葛藤を乗り越えて、女王にとっては我が子でもあるイングランドを守るため、無敵艦隊スペインとの戦いを決意し、勝利するまでを描いた作品。 イングランドの花嫁が、内面の葛藤や苦悶を克服し、イングランドの母となったクィーン・エリザベスの物語といえるだろう。 ケイト・ブランシェットの演技が際立つ。 ヴァージン・クィーンであることで、イングランドを手中に収めようとする各国の動きをはぐらかす一方で、一人の女の幸福を得られないことの虚しさや淋しさを噛み締める。そんなクィーンの前に現れた、新世界の探検し未知の冒険に生きるウォルター・ローリーのもつ「自由」に惹きつけられ「私を連れ出して!」と口走る。ローリーに癒しと救いを求めるエリザベス。 ウォルター・ローリー演じるクライヴ・オーウェン。ハリウッド作品が多いので、ずっとアメリカの役者だとばかり思っていて、イギリスの俳優に混じって、軽くないか?って観るまでは思っていたけれど、伝統と格式の堅苦しい王室の中に、一陣の自由な風をもたらす堂々の存在に、よくよく彼のプロフィールをみるとイギリス出身でイギリス王立演劇学校で演技を学んだという経歴に納得でした。 それで思い出した。彼「キング・アーサー」でアーサー王だったんだ! ちなみにウォルター・ローリー卿は、探検家であり詩人、作家でもあり、新世界における最初のイングランド植民地を築いた功績がある人だそうで、エリザベスの寵愛を受けるけれど、彼女の死後、内乱罪で一時幽閉され、その後、南米の探検に行くも、スペインの入植地において斬首刑に処せられたとのこと。そんなウォルターと図らずも関係をもち妊娠してしまう、女王寵愛の侍女ベス役には、オーストラリア映画「キャンディ」でヒース・レジャーと共演したアビー・コーニッシュ。彼女もまた本作で若やいだ中にもクィーンを敬愛する誠実な侍女役でなかなかの好演を見せていた。 ただ本作は、エリザベスに光をあて、これが監督の本作の演出意図だったのかもしれないけれど、エリザベスの内面描写にウェイトを置きすぎていて、華やかな表舞台の陰で繰り広げられるドラマやエリザベスの心の奥深くに潜む闇が極めて断片的か台詞でしか語られておらず、どうかするとケイトの一人舞台といった感があった。謀反人たちの拷問道具を使った非情なシーンなども盛り込まれていたりするけれど、エリザベスに忠誠を誓い、策謀術に長けたフランシス・ウォルシンガムを演じたジェフリー・ラッシュ、陰謀の影で動くレストンを演じたリス・エヴァンス、メアリー役のサマンサ・モートンといった演技力のある個性的な役者を配しながら、エリザベスの周りで動くだけに終始していたのは勿体なく、エリザベスを取巻く魑魅魍魎たる血塗られたドラマがやや置き去りにされたところがあり、歴史を題材にした作品としてはやや物足りなさを感じる。 大作でありながら、米アカデミー賞も含め各映画賞のノミネートがケイト・ブランシェットの主演女優部門だけという淋しい結果もこのあたりにあるのだろうか。 ちょっと背景の断片をつなぎ合わせてみると…… ヨーロッパでは世界制覇を目論むスペイン国王フェリペ2世は欧州全土をカトリックにするという誓いのもと、カトリックと決別しイングランド国教会を打ち立てたイングランドに対して、ことあるごとに圧力をかけてきている。そんなスペイン国王の野望と狡猾な企て。そしてその企てにはめられ、イングランドはスコットランド女王メアリーを処刑する。それがスペイン無敵艦隊との海戦につながっていく……一連のドラマ。(この辺りがちょっと分かりにくかった。) またフランス王族の血を引きイングランド王ヘンリー7世につながる血統にあるスコットランドのメアリーに対し、エリザベスにつきまとうのは「妾腹の女」。 そしてエリザベス自身も、実の父が母を殺し、自らも処刑される運命にあったという、出自にまとわりつく血塗られた事実に、「母のような、むごい殺され方は嫌!」と死の恐怖に怯える。 権力をめぐる身内同士の血塗られた争いに敏感に反応するエリザベスは、従兄弟であるメリーの処刑に女王として署名しながらも、一人の人間としてエキセントリックなまでに取り乱す。また義兄であるスペイン国王との闘いにおいても、「これは宗教戦争だ」という言い切ったのは、骨肉の争いではないんだと自らを納得させる言葉でもあったのかもしれない。 骨肉の争いのむごたらしさを見ているエリザベスには、破れたときの自分と母の死、メアリーの死が重なったのだろう。 こんな彼女の中に巣食う闇の部分や、スペインとの戦争に至る暗躍のドラマとエリザベスの内面がかちっと絡み合いが弱く、ケイトの演技には上手さを感じるけれど、深みのある内面が描かれているかというと、女王の苦悶や葛藤が心情的に綴られた作品に終っているように思う。 ちょっと横道にそれますが……「1000日のアン」を若い頃に観たのだけれど、すっかり忘却の彼方で、レンタルショップにも見当たらない。前作「エリザベス」を見てから思い出し、観てみたいとずっと思っているのだけれど……。 スペインを迎え撃つ兵士を前に、自ら甲冑に身を固め白馬にまたがり、彼らを鼓舞するシーン(ケイトはカッコ良かったけれど目の前の兵士の数は少なく戦闘いうにはいささか迫力には欠けたけれど…)とか、焼き討ち船で爆破されたスペインの戦艦から船上にいた白馬が海に飛び込むシーンなどユニークな映像演出の面白さもあり、映像としての見ごたえがあったものの、今回の「エリザベス ゴールデンエイジ」は作品としての厚みはどうかなって思う。 そういう意味では様々なドラマが絡み合った前作「エリザベス」の方が、ケイト・ブランシェットの演技も含め見ごたえがあったと思う。 とはいうものの、スペインを破り、七つの海を制する海運国となるイングランド黄金時代の、その礎を築いたヴァージン・クィーンの物語。重みを感じさせる映像、そして「着道楽」といわれたエリザベスや、側近たちの凝った衣装には、日常ドラマを扱った映画が多い最近の公開作品の中で、久々に大作を観たという実感はあった。(良かったのか悪かったのかどっちやねん…笑) *アカデミー賞が発表され、本作は「衣装デザイン賞」を受賞したとのこと。服装に自らを慰めたのでしょうか。「着道楽」といわれたエリザベス女王。側近たちの衣装まで含め、彼女たちを包むファッションはさすが受賞するほどの見ごたえはありました。特に女性にはこれだけでも大いに堪能できると思う。 監督: シェカール・カプール 製作: ティム・ビーヴァン/エリック・フェルナー/ジョナサン・カヴェンディッシュ 製作総指揮: マイケル・ハースト/デブラ・ヘイワード/ライザ・チェイシン 脚本: ウィリアム・ニコルソン/マイケル・ハースト 撮影: レミ・アデファラシン プロダクションデザイン:ガイ・ヘンドリックス・ディアス 衣装デザイン:アレクサンドラ・バーン 編集:ジル・ビルコック 音楽:クレイグ・アームストロング/アル・ラーマン 出演: ケイト・ブランシェット(エリザベス女王1世) ジェフリー・ラッシュ(フランシス・ウォルシンガム) クライヴ・オーウェン(ウォルター・ローリー) リス・エヴァンス(ロバート・レストン) ジョルディ・モリャ(スペイン国王フェリペ2世) アビー・コーニッシュ(ベス・スロックモートン) サマンサ・モートン(スコットランド女王メアリー) トム・ホランダー エディ・レッドメイン アダム・ゴドリー
by mchouette
| 2008-02-26 00:00
| ■映画
|
ファン申請 |
||