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TRULY MADLY DEEPLY
1991年/イギリス/106分 アンソニー・ミンゲラの初監督作品。 本作でミンゲラ監督は1991年第64回アカデミー賞でオリジナル脚本賞を受賞し、1992年第20回アボリアッツ・ファンタスティック映画祭では批評家賞と、ニーナを演じたジュリエット・スティーヴンソンは主演女優賞を受賞している。 先日「こわれゆく世界の中で」映画感想をあげ、メッセージを下さったvivajijiさんが、その中で「本作でミンゲラ監督にコロッとイカレチまったの私は」と教えてくださった作品。 レンタルショップにはビデオテープしかなく、どうもDVDにはなっていないようです。 画像がかなり不鮮明なのは残念だけど、見れただけも良しとしましょう。 映画情報もみず、還ってきて、いそいそとビデオを再生したら、アラン・リックマンさんが、ニーナの恋人のチェロ奏者ジェイミー役で、アーティストの雰囲気も漂わせていて、何よりもニーナを愛している心優しき幽霊で登場しているではありませんか。 これはちょっと新鮮。 幽霊となってニーナの前に現れたあたりなどは、とても素敵な雰囲気。再会した二人の春の日差しのような日々。彼のチェロの調べ、彼の歌。二人でピアノを弾きながら歌い踊り、ニーナとジェイミーの甘い蜜月。 二人の歌と演奏は自前でしょうね。ちょっとしたミュージカル風で楽しい。 本作のニーナとジェイミー アラン・リックマンと言えば、「ダイ・ハード」のテロリスト・リーダー、ハンス・グルーバー役に抜擢され映画デビューしたアラン・リックマンさん。以降も悪人役とか陰険な役が多くって、「ハリーポッター」シリーズでは、いつも黒いマントを着ているスネイプ先生やってます。「パフュームある人殺しの物語」では、本作と比べると随分中年太りしてられる。この中年太り体型がイメージだったけど、こんなスリムな時代もあったんだって、これも意外な新鮮。 ニーナ役のジュリエット・スティーヴンソン。「華麗なる恋の舞台で」でアネット・ベニングの一言物申す付き人で出てました。彼女も味のある役者。 「ダイハード」のテロリスト役のアラン・リマック 「ハリー・ポッター」シリーズのスネイプ先生のアラン・リックマン 話が飛びすぎて、前に戻ると…… 翻訳の仕事をしているニーナとチェロ奏者のジェイミーは恋人同士で一緒に暮らしていたけれど、ジェイミーはある日扁桃腺炎の手術でパイプが喉につかえて窒息死してしまう。 ちっとも悲劇的な死に方ではない、こんな死に方にちょっと笑ってしまう。 ここで悲劇性をもってきたら、とってもくさいメロドラマチックな作品になってしまう。 チャーミングなニーナの心の穴を埋めようと、周りの独身男性たちが、彼女に近づくけれど、ニーナはただ笑顔で彼らの誘いを拒む。ジェイミーへの思いを未だに断ち切れずにいる。 ニーナに言い寄る男性陣もみな味があって、スケベ男っぽくないのがイギリスらしい。 健気に笑顔で明るく振舞っているけれども、毎週通っているセラピストの部屋で「楽しく明るくしている周りの人が憎い。一番憎いのは彼。どうしてここに居ないの!それが憎い!」とジェイミーがいなくなった毎日が淋しくて辛くて耐えられないと泣き続ける。 愛する人が逝ってしまうと、その人のどれもが愛しく懐かしい。彼の口うるさい小言までもがニーナにとっては大事な彼の思い出。彼との思い出の中で生きているニーナ。 そんなニーナのジェイミーに対する強い思いが通じたのでしょうか。ニーナの前にジェイミーが幽霊になって現われる。生きていた頃とちっとも変わらないジェイミーが目の前にいる。「君さえよければずっと君の側にいるよ」ジェイミーが言ってくれた。彼の小言も嬉しくって仕様がないニーナでした。 ドラマチックではなくって、とっても日常的でとっても自然なリアルさがあって、こういう何気ない会話で場面を作っていくあたりは、イギリスの俳優は舞台で鍛えられてるからでしょうね。上手いですね。 ベッドの上で、ジェイミーが一生懸命口に手を当てている。「何をしているの」ってニーナが聞くと「唇を暖めているんだ」ってジェイミー。そう、幽霊だから体温がないから唇も冷たいんです。ニーナとキスするために彼は一生懸命、唇を暖めているんです。 こんな何気ない二人のやり取りとか会話の演出に、ミンゲラ監督の人間性みたいなものが感じられる。 <結末にふれてます> こんな蜜月も1週間も過ぎると、段々と当たり前になってくる。 顔にパックしてお風呂に入っているニーナは、ジェイミーに、少しは一人にさせて、なんて言葉も出てくる。幽霊だから身体が冷たいジェイミーは室温をどんどん高くするし、幽霊の友だちを家に来させる始末。挙句、幽霊の友達たちはビデオに夢中で家に居候してしまう始末。 「ファイブ・イージー・ピーセス」とか「見知らぬ乗客」とかの映画のタイトルが出てくる。ミンゲラ監督の青春の映画とか好きな映画なんでしょうね。 ベッドも彼らに占領されて、彼らのリクエストでビデオのレンタルを頼まれるし…… ジェイミー達は勝手に部屋の模様替えをするし…… 「ここは私の家よ!」 「あなたがいなくなって寂しいけれど、何もできなかった私は、あれから一人でやってきたの!」 「私が欲しいのは生命よ」 前半は、結構コミカルな雰囲気で展開していって、ミンゲラ監督ってこういうテイストもあるんだって思って観ていたけど、後半、最後はやっぱり、胸にじっくりと染み入る映像。 多くを語らず、それでもじっくり伝わってくる愛する男の恋人への、まさに TRULYで MADLYで DEEPLYな 愛 これがミンゲラ監督のセンスなんだって存分に思わせてくれる。 「これでいいんだ、きっと」 彼女が部屋を出て行った後、ジェイミーは仲間の幽霊達に静かにうなずく。 そして、新しい恋に向ってニーナが前に歩き出したのを、窓越しに見つめ、そっと涙を拭うジェイミー。 こんなアラン・リックマンの静かな演技、表情には泣かされる。 流れるピアノ曲がなんともいい。 幽霊になって恋人の前に現れるという設定は、本作の前年1990年に公開されたアメリカ映画「ゴースト/ニューヨークの幻」がある。パトリック・スウェイジが幽霊になって恋人のデミ・ムーアを悪者の手から守ろうとするお話。巷ではかなりブレイクした作品だったけど、私はどうもパトリック・スウェイジの鬼瓦みたいな顔と、顔に似合わぬ元バレイダンサーの身体の(しなやかというんでしょう)動きがどうもしっくりこないのもあったのでしょうか。テーマ曲の「アンチェインド・メロディ」に惹かれて観たけれど、どうもこの映画はピンと来なかった。この二人に切なさとか、味わいを求めるのも無理な話ですけど。この手のロマンチックな映画っていうのもあまり性にあわないところもある。 本作は、「ゴースト」のようなドラマテッィクな展開に比べると、愛する男が、自分の死を乗越え、新しい恋ができるように、彼は彼女の前に現れる。死んだ男の気持を思うととても辛いことだけれど、それだけの物語。だけど、ずっと胸に染み入る。 人が人を愛するということ。 そして、人が人を愛するということの重み。 生きているということ。 アンソニー・ミンゲラ監督は、男と女の細やかな情愛を、人間の愛と生と死を、静かな語りで、こんな普通の日常の中で奥行き深く描いている。 ジェイミーがスペイン語で語った詩をニーナに訳させる。この場面は、二人がどれだけ愛し合っていたか、そして死によって分かたれた二人の哀しみが見事に描かれている。 許しておくれ 原題「TRULY MADLY DEEPLY」 「愛しい人が眠るまで」 この邦題はお見事! 監督: アンソニー・ミンゲラ 製作: ロバート・クーパー 脚本: アンソニー・ミンゲラ 撮影: レミ・アデファラシン 音楽: バーリントン・フェロング 出演: アラン・リックマン ジュリエット・スティーヴンソン マイケル・マロニー キャロリン・チョア ビル・パターソン
by mchouette
| 2007-11-21 00:00
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