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IL MESTIERE DELLE ARMI
2001年/イタリア/105分 この物語の語り部である兵士が冒頭で語る科白 「新しい兵器が戦いを変え、戦いが世界を変える」 16世紀、ルネサッスの時代に実在した一人の騎士の戦いと死を描いた物語。 人そのものが兵器であった時代。戦士の剣はその腕の延長で、戦士は自分の目で相手を見据え、力を競った。そして武将たるものは互いに尊厳を持って、一対一で対決することが正しき名誉ある戦いとされていた。 しかし、ルネッサンスの技術革新は、大砲という恐るべき武器を生み出した。 そして戦いの中、メディチ家の若き武将ジョヴァンニが砲弾に倒れ、28歳の若さで亡くなった。 イタリア映画界の巨匠、1978年製作、 「木靴の樹」でカンヌ国際映画祭グランプリ受賞したイタリア映画のエルマンノ・オルミ監督が、このルネサンス時代の実在した騎士ジョヴァンニ・デ・メディチ(1498-1526)を描いた作品が本作「ジョヴァンニ」 「機械とテクノロジーに支配される現代、倒すべき敵は顔も声もない。痛みや憐れみを理解する心はもはや失われてしまった。激しい愛にも憎しみにも無関心になり、他人との距離を保つことばかりに気を取られている。科学や技術の“進歩”は、決して人間性やモラル、そして文明を豊かにしたとは限らない」とオルミ監督は語っている。 物語の最後で、「ジョヴァンニの死によって、あまりの恐ろしさゆえにその武器は永遠に封印されることになった」と語られている。 しかし戦争の世紀といわれた20世紀で、人間は戦争を経験するたびに新しい兵器が生まれ、戦いが変わり、そして世界が変わっていた。 湾岸戦争を描いた映画「ジャーヘッド」で、一人の狙撃兵が「この戦争は速すぎる。900mの射程を撃つのに第二次大戦で1年、ベトナム戦争で1週間、今や10秒で命中だ。俺達が狙いを定めている間に戦争はどっかにいっちまう」と一人の兵士がつぶやくシーンがある。 ハイテク戦争といわれた湾岸戦争において、戦場における疎外感と絶望と無力を描いた「ジャーヘッド」にも通じるテーマだ。 16世紀の戦いを描きながら、オルミ監督は、現代というこの時代に警鐘を鳴らすものとして本作を描いたのだろう。 物語の背景… 16世紀初頭、ヨーロッパ全土に覇権を広げた神聖ローマ帝国(ゲルマン軍)は、イタリア北部を制圧、ポー川を越え教皇庁のあるローマに一気に攻め込もうとしていた。 メディチ家に生まれたジョヴァンニは、弱冠17歳で100騎の騎兵隊の指揮官に命ぜられ、以降、歴戦の勝利で名将として名を上げる。1521年にローマ教皇レオ10世がこの世を去ると、忠義心から喪章の黒線を引いた白旗を翻して戦ったことから「黒隊のジョヴァンニ」と呼ばれ、その名が歴史に刻まれることになる。 北イタリアの都市マントヴァ。ポー河を渡ろうとするゲルマン軍である神聖ローマ帝国軍を阻止しようと迎え撃つ教皇庁・フランスの連合軍。その前衛軍がジョヴァンニ率いる「黒隊」 物語は1526年11月24日から11月30日までの6日間の戦いと、その戦いを巡る政治的策略を背景に、28才の若さで命を落とした最後の騎士ジョヴァンニ・デ・メディチを描いたもの。 当時のイタリアは、小国が群雄割拠していた時代。ヴァチカンとドイツとの戦争が自国の領土内で勃発しては困るという考えが領主たちの本音でもある。教皇に忠誠を誓う、その裏で皇帝軍に便宜を図るといった大国寄りの決断をする領主もいる。戦争とは陰謀と策略の渦巻く世界。こうした政治的策略や思惑が、ジョヴァンニの死という悲劇につながっていく。敵陣に切り込んでいったジョヴァンニは、突然現れた大砲の奇襲に倒れる。 戦いが「美」であった時代。 厳しい冬の中の戦況を描きながら、その映像は、どこまでも静かで、どこか悲哀を帯びた荘厳な美しさで進んでいく。 木にぶら下げられた死体。 ポー河をはさみ対峙する二つの軍隊。 ジョヴァンニが妻に宛てた手紙で、さしはさまれる妻の姿は、フェルメールに描かれる女性の佇まいにも似ている。 そしてジョヴァンニと人妻との愛の回想シーンも美しい。 負傷したジョヴァンニが足を切断する壮絶なシーンですらゆっくりと流れていく。 皆を退室させ自ら灯りの蜀台を持ち、痛みに手がゆれ、蝋が服に垂れ、天井画がゆっくり回りながら映し出され、激痛で気を失いそうになるジョヴァンニが伝わってくる。 雪の霧の静寂な静けさの中で描かれた映像は、どこまでも冷たく幻想の中にいるかのような……。 貴族の館のベッドで横たえていたジョヴァンニは、死に行く時、野営ベッドを用意させる。 互いに尊厳を持ち、一対一で闘うことを戦いの美学としたジョヴァンニは、最後まで一人の戦いに人生を捧げた人間として死んでいった。 最後のシーン。一人の少年を見つめる甲冑姿のジョヴァンニの眼から涙が流れる。 雪の中の夜襲は兵士が嫌がるという部下に、甲冑を身に着けながら「戦争とは嫌なものだ」と言うジョヴァンニ。 人が人を殺し、そして自らも戦いで死んでいく。 戦いに生きたジョヴァンニが、最後に、闘うことの虚しさを知った涙だったのだろうか。 ジョヴァンニを演じたフリスト・ジフコフは「現場はマイナス22℃。甲冑は重い(約40kg!)上に、外気でどんどん冷たくなって、初めは息をするのも大変でした。」厳しい撮影現場はまさに監督との“戦い”でもあったという。「台本は翌日分程度しか渡されず、台詞を覚えるのがやっと。でもその様に追い込まれた中でシーンを重ねるごとに自分がジョヴァンニになっていったと感じる」とインタビューで答えている。 監督: エルマンノ・オルミ 製作: アレッサンドロ・カロッシ 脚本: エルマンノ・オルミ 撮影: ファビオ・オルミ 美術: ルイジ・マルキオーネ 衣裳: フランチェスカ・サルトーリ 音楽: ファビオ・ヴァッキ 出演: フリスト・ジフコフ (ジョヴァンニ・デ・メディチ) デシスラヴァ・テネケディ(エヴァ マリア) サンドラ・チェッカレッリ (マントヴァの貴婦人) セルジオ・グラマティコ (フェデリコ・ゴンザーガ) サーサ・ヴリチェヴィッチ
by mchouette
| 2007-11-14 00:00
| ■映画
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