by mChouette 検索
カテゴリ
全体 ■映画 =映画:あ行 =映画:か行 =映画:さ行 =映画:た行 =映画:な行 =映画:は行 =映画:ま~わ行 ■映画・雑記 ■ドラマ ■展覧会・コンサート ■一冊の本 ■徒然なるままに… ■美味しいもの ■アウトドア・旅 ■勝手にバトン ■ご挨拶・お知らせ 未分類 最新の記事
その他のジャンル
|
フィリップ・リオレ監督の「マドモワゼル」(2001)をCS放映で観たのは随分前のこと。灯台がとても重要なアイテムとして使われていて、「灯台守の恋」(2004)と続けて記事UPしたいと思っていて、やっと、今頃……。
ジャンヌ・モロー主演のちょっと怖いお話「MADEMOISELLE」(1996)。こちらの邦題カタカナ表記は「マドモアゼル」となっており、本作フィリップ・リオレ監督「MADEMOISELLE」(2001)の邦題カタカナ表記は「マドモワゼル」となっている。 映画情報によるとビデオタイトルは「マドモワゼル 24時間の恋人」 上映時間85分の、ちょっと素敵な物語。「仕立て屋の恋」「親密すぎるうちあけ話」のサンドリーヌ・ボネールと、「クリクリのいた夏」や「美しき運命の傷痕」で長女役のエマニュエル・ベアールの夫を演じたジャック・ガンブラン。主役二人がとてもいい雰囲気を出している。 サンドリーヌ・ボネール演じるクレールは製薬会社の販売員をしながら、夫と2人の子供と暮らす女性。市場に行けば「マダム」と呼ばれる普通の主婦。 ジャック・ガンブラン演じるピエールは、いつか舞台に立つ夢を持ちながら役者仲間3人と即興劇団を組んでいる。脚本家志望の彼は、公演とは名ばかりのイベント余興でしか芝居ができないそんな生活に鬱屈した思いを抱えている。 出会うことのないそんな二人が、いくつかのアクシデントから、24時間という短い時間だけれど同じ時間を共有する。そんな時間の中で惹かれあう二人。 フィリップ・リオレ監督って、日常生活と違う状況の中で、人は今まで知らなかった自分に気づき、そしてそんな自分とどう向き合うのかといったことをテーマに、日々の営みのなかで優しい眼差しで人の心の動きを描いている。そんな映画監督だと思う。 前作「パリ空港の人々」でも、パスポートが盗まれた為、空港内でつい寝てしまい財布もパスポートも全て盗まれ、空港のトランジット・ゾーン(外国人用処理区域)で過ごすことになった一人の中年男性が、そこに住み着いている人々との交流を通じ、そんな非日常の空間で、ちょっと生き生きとしている自分を発見したり、彼らの抱えている様々な状況を知り、彼らとの間に情を交わしあう。そして身分が証明され無事に空港を出た時、不法入国しトランジット・ゾーンで父親が迎えに来るのをずっと待っていた一人の少年が彼の後を追って空港を抜け出してきた。男は空港を出て、いつものように彼の日常の空間に戻っていくけれど、それまでの彼とは違う。一旦は、少年を追い返した男だったが、やがて少年と手をつなぎ我が家へと向う。 そして、「マドモワゼル」でも、クレールが働く製薬会社主催のパーティに、ピエールたちが即興劇団として雇われていた。そのパーティの前にコンビニに買い物にきた二人は偶然にも短い会話を交わしていた。それだけ。 でも翌朝、ちょっとしたアクシデントでクレールは帰りの電車に乗り遅れ、ピエールたちの車に同乗させてもらう事になった。リーダーの男性とピエールの険悪な雰囲気。 ピエールがコンビニで出会った女性だと気がつき、クレールを見つめる。 人が人に惹かれる時って、その人の醸し出す雰囲気とか佇まいに、ふと心がざわつくような、震えるような、そんな微かな合図で惹かれるものだろう。クレールを見つめたピエールはきっとそんな風だったのだろう。 いつもいつも3人で鼻を突き合わせ、将来の展望もみえないドサ回りの生活の中で、クレールの存在がとても新鮮に映ったのではないだろうか。 クレールもまたそんなピエールの素直な眼差しにふと心が揺らいだのではないだろうか。 微かな二人の触れ合い。 そもそものアクシデントは、退職する同僚にプレゼントした「灯台の模型」がきっかけ。 その灯台を同僚がホテルに置き忘れたために、クレールは帰りの電車に乗り遅れその灯台を抱えてピエールたちと行動を共にすることになってしまったのだ。相手の心情を思いやるクレールの人柄がさり気なく描かれている。 ピエールは、その灯台を見て、アルマンの灯台を舞台に、一人の女性を愛する二人の男性を描いた脚本を書いているとクレールに話す。灯台守は48日間灯台で暮らす。一人の灯台守が、もう一人の灯台守に妻のことを語る。いつしかその男の妻に恋をしてしまう。顔も知らない、話を聞くだけのその女性に恋をする、おかしな話だろうとピエールは言う。そしてそんな脚本を舞台で上演する機会はやって来ないだろうと将来に希望を持てない心境を語る。 ピエールという男性のナイーブな心に触れたような、クレールはふとそんなピエールに惹かれるものを感じた瞬間だろう。 結局、クレールはその「灯台」のために、ピエールたちの次の仕事先である金持ちの結婚式にまで同席する羽目になってしまう。 余興ばかりの芝居に嫌気がさしていたピエールは、自分の即興の場面をクレールに振る。戸惑いながらもクレールは新郎新婦を祝いながら「灯台」について話し出す。 この灯台は父が作ったもので、父は灯台守だったと。ある日、一人の若者が灯台守として島にやってきた。若者はもう一人の灯台守に、毎日毎日、恋人の話をし、男は若者の恋人に恋をしてしまった。そしてとうとう男はその女性の住む町に行き、そこで一人の女性と出会う。恋していた女性だとすぐに分かり、二人は恋に落ち、そして私が生まれた……と。クレールが語る「灯台守の恋」の話に、会場は感動し、そしてピエールの心の中にクレールが入り込んでしまった。 そしてクレールも「灯台守の恋」の世界に陥ってしまったような……。 花嫁からプレゼントされたブーケをもったクレールとピエールは、新婚カップルに間違われ、クレールは「マドモワゼル」と呼ばれ……。そんな風に言われ華やいだ気持ちになる。 とうの昔に置き忘れてしまったと思っていたヒリヒリした思い、純な時代に戻ったような時間、自分の気持ちに素直になれるこんな時間。 夢を見ることを忘れてしまった大人になった二人は、こんな時間を抱きしめたいと思ったのだろう。純で素直な自分が愛しかったのだろう。 翌朝、ホテルのカフェで、家に帰る電車の時刻を気にするピエール。車を動かしに外へ出たピエールは、車の中で、クレールが立ち去る時をじっと耐えていた。ガラス越しにそんんな男の姿をみたクレールは、「灯台」をテーブルに置いてカフェを出る。 いつもの生活の中で、買い物を済ませ車に乗ったクレールの目の前に、国立劇場で上演されている舞台のポスターが……。 「アルマンの灯台」。 ポスターに描かれている灯台は、あの時カフェのテーブルにそっと置いてきた灯台だった。 24時間だけの秘めやかな恋。淡い夢のような時間。 クレールの愛を受け止めたピエールの愛が「アルマンの灯台」という戯曲となってクレールの前に…。 一つの愛の成就。これだけでいい。再びピエールと会うこともないだろう。 誰にも言わず、自分の心の奥で大切にしまっておきたいそんな愛。 85分で綴られた大人の男と女の、ふと出会い触れ合った愛の物語。 サンドリーヌ・ボネールの微かに寂しさの漂う笑顔が素敵だ。 そしてフィリップ・リオレ監督は、クレールとピエールの物語の中で次作「灯台守の恋」を暖めていたのだろう。 監督: フィリップ・リオレ 製作: パトリック・ゴドー 脚本: フィリップ・リオレ クリスチャン・シニジェ 脚本協力: エマニュエル・クールコル 撮影: ベルトラン・シャトリ 音楽: フィリップ・サルド 出演: サンドリーヌ・ボネール(クレール・キャンスリエ) ジャック・ガンブラン(ピエール・カッシーニ) イザベル・カンディエ (アリス・コーエン) ジヌディーヌ・スアレム (カリム・クタール) ジャック・ブーデ (ジルベール・フレモン)
by mchouette
| 2007-11-06 00:00
| ■映画
|
ファン申請 |
||