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HIMALAYA - L'ENFANCE D'UN CHEF 1999年/ フランス・ネパール・スイス・イギリス/108分 キャラバンとは、動物のヤクを運搬手段にして通商するネパール高原民族の商隊のこと。 彼らは生きるために塩を積み麦と交換するために、ヒマラヤの険しい山をいくつも超えて町に向う。厳しい自然と闘いながらのキャラバンの旅は生死を賭けた過酷な旅でもある。 本作は、ドキュメンタリーではなく、キャラバン内の、地位と伝承の継承をめぐる新旧世代間の確執といった人間ドラマ仕立てにすることで彼らの営みを浮き彫りにしている。 登場人物のほとんどが、演技経験のない現地の人々を起用しての撮影だったとのこと。 監督はエリック・ヴァリ。写真家でもあり作家でもある。1980年代からこの地に住み、映画「セブン・イヤーズ・イン・チベット」ではユニット・ディレクターも努めたそうだ。 製作・脚本協力は俳優でもあり、「ミクロコスモス」の製作や「WATARIDORI」の製作総指揮に携わったジャック・ペラン。 音楽は「ミクロコスモス」のブリュノ・クーレ。 オール・ロケを敢行した標高5,000メートルを超えるヒマラヤ山脈の映像。ブリュノ・クーレの音楽。ネパールの高原民族の厳しい自然との闘い、生死をかけたキャラバンといいつつも、その映像と音楽はどこまでも美しく、まさに癒し系。 ドラマ仕立てにしたからだろうか、ネパールの高原民族の実態というものが、今ひとつ心にぶつかってこなかった。 「プージェー」という映画 以前、写真家で探検家の関野吉晴氏が、モンゴルの大草原で出あった遊牧民の少女プージェー(当時6歳)とその家族を、5年の歳月をかけて撮り続けた記録映画「プージェー」(2006)を観た。 社会主義にとってかわった市場経済主義が貧富の格差を生み、こうした経済活動の波から取り残されたモンゴル遊牧民たちの過酷な現実も浮かび上がってくる。心に強く響いた映像だった。 「プージェー」 「木曜日に生まれた幸せな子」という意味 人の心に訴えかけてくるものとは、音楽や映像もあるだろうが、プージェー一家のように自然の中で逞しく毅然として生きる人間の姿だろう。幼いプージェーの姿に、私は人間の尊厳をみる思いがした。 1999年、関野氏が南米最南端から人類誕生の地アフリカを目指す旅「グレートジャーニー」の途上、モンゴルの平原で巧みに裸馬に乗り放牧の牛を追っている6歳のプージェーに初めて会ったとき、彼女はしっかりとカメラを見据えて、「撮らないで!撮るんだったらあっちに行って!」と言った。邪魔をしないでということだろう。彼女のやっている牛追いは遊びではなく、生きるためなのだ。6歳の彼女の目に、しっかりと生きる人の強さがあった。 関野氏は、彼女のこの毅然とした態度に惹かれ彼女を撮りたいと思ったそうだ。これはフィクションでは撮りえない映像だろう。 地球を歩くとき、こどもたちの笑顔に出会うことほど嬉しいことはない。私が惹かれたこどもたちに共通点があることを見つけた。 本作「キャラバン」は多くの賞を受賞している。美しく感動的な映像なのだろうと思う。けれど、この映像の何が審査員たちの心を揺さぶったのだろうか。 私は「プージェー」の方がはるかに心に突き刺さった。 「プージェー」で羊の屠殺シーンがあった。人差し指と中指を使って心臓近くの大動脈を引きちぎって即死させる。皮を剥ぎ、その上で内臓を取り出し、肉をさばいていく。一滴の血も大地に落とさない。聖なるモンゴルの大地を血で汚すことはしない。そして一滴の血も無駄にせず食べ尽くすという彼らの生きる知恵。この解体作業の映像だけでも、大地と共に生きる遊牧の民の営みが伝わってくる。 *2004年、関野氏がプージェーの暮らすゲルを訪れると、彼女は交通事故で亡くなっていた。小学校卒業寸前。12歳だった。関野氏との交流の中で彼女はモンゴル以外の国を知り、大きくなったら通訳になりたいと彼に語っていたという。 「キャラバン」をみた感想が、「プージェー」の感想になってしまった。 自然の営みに人間が何処まで手を加えて映像にできるのか…… 映像によって何を伝えたいのか…… 厳しい自然環境の中で生きる二つの民族を撮った映画で、こんなことを思った。 「キャラバン」 2000年アカデミー賞 最優秀外国語映画賞ノミネート 2000年フランス・セザール賞 最優秀撮影賞、最優秀音楽賞受賞 1999年フランダース国際映画祭最優秀観客賞/ゴールデン・シュプール賞/特別貢献賞受賞 1999年ロカルノ国際映画祭 最優秀観客賞受賞 第72回アカデミー外国語映画賞ノミネート。 監督:エリック・ヴァリ 製作:クリストフ・バラティエ/ジャック・ペラン 脚本: ナタリー・アズーレ オリヴィエ・デイザ ルイ・ガルデル ジャン=クロード・ギルボー 撮影: エリック・ギシャール ジャン=ポール・ムリス 音楽: ブリュノ・クーレ 出演: ツェリン・ロンドゥップ カルマ・ワンギャル グルゴン・キャップ カルマ・デンジン・ニマ・ラマ ラクパ・ツァムチョエ
by mchouette
| 2007-08-18 00:00
| ■映画
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