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「ブロークバック・マウンテン」のこと
アン・リー監督のこと ゲイ・ムービーのこと いつもお邪魔しに行くブログ「豆酢館」。豆酢ちゃん、今日はどんな記事アップしてるかしら? 豆酢ちゃんの記事にドキッ。 また胸が高鳴ってきた。 あれから早一年が経っているというのに、この胸のざわつきは…「ブロークバック・マウンテン」だった。 豆酢ちゃんとこはお子さんが小さいからお家シネマしたみたい。 劇場で観たときにブログ開設していれば、感動の勢いでせっせと感想の記事をアップしたんだけど、今映画の感想を書くっていうのも私の中では妙な具合で、でも、このざわついた思いだけは書き留めておきたいと…徒然に綴ってみました。戯言です。お時間ございましたらお読みください。 この作品、初めて劇場で観たとき(2006年3月)は、アン・リー監督らしく、かなり抑えた演出で、胸が締めつけられるようなシーンでも、涙が出るというよりも、涙が静かに胸の内に沁み込むといった表現の方がぴったりくる。アン・リーの作品ってそういうテイストだ。これがアン・リー作品で私がいいと思うものの一つ。そして、映像が終わり、エンディング・ロールでクレジットが流れている時に、私の内に沁みこんでいたものが、「感動」と呼べばいいんでしょうか、それらがジワーッと沸き起こってきた。これには少し鳥肌が立つ思いだった。 「あぁ、やっぱりアン・リーだ」って思いました。 そうなると、私はこの感動が本物かどうか確かめたいのか、はたまたこの感動をもう一度なのか、劇場にまた足を運んでしまう。で、3回も観てしまった。 直感イメージ型の私には起った感動が何に基づくのかを直ぐに言葉でうまく掴めないため、何が私をこれほど感動させるのか、確かめたいという気持ちもあるんでしょう。 同じく感動したポール・ハギス「クラッシュ」も3回観た。 アカデミー賞ではこの2作品の賞取りレースになった。 「クラッシュ」はアカデミー賞ノミネート前に公開されていた。確か2月ごろ。これを見たときはアメリカの抱える差別について、外からの差別・偏見と内なる差別の両面から切り込んだ作品で、ポール・ハギスの映画作りの職人技をみる思いだった。これはアカデミー賞にふさわしい作品ではないかと内心密かに思い、この年は「ブロークバック・マウンテン」とあわせアカデミーの受賞の行方にかなり興味が持てた。 で、こちらも3回観た。劇場では本作はノーマーク作品でシネコンで当初は2週間の期間限定の上映だったが、アカデミー賞作品賞受賞が決まるや、一挙に客が増え、上映延長となった。 「クラッシュ」は3回目でもういいと思った。 「ブロークバック・マウンテン」はまだ観たいと思った。しかしさすがに3回以上観るのは行きすぎだろうと、DVDを買った。 「ブロークバック・マウンテン」はヴェネチア映画祭で金獅子賞受賞のニュースを聞いてから、いつ来るのかと首を長くして待っていた作品である。年を超え、アカデミー賞が終わってから、やっと上映された。ヴェネチア映画祭が2005年9月、そして本作上映が2006年3月、約半年待ち焦がれた。この年のヴェネチア映画祭では、ブログにアップした「恋人たちの失われた革命」のフィリップ・ガレルが監督賞を、「13/ザ・メッティ」のゲラ・バブルアニが新人監督賞をそれぞれ受賞している。 実はヴェネチア映画祭のもっと前から、私はこの作品を求めていた。 子供たちが大きくなり、ようやく映画にたっぷり時間がとれるようになった時、今は毎週のように国内・国外問わず新作が公開され、1ヶ月でかなりの作品が上映されている。でもその中で胸にコツンとあたるような作品があるかというと、どうもあまりそういう作品に出会わない。出会ったとしてもコツンとぶつかる力がどうも弱い。もう一度観たいと思える作品が以前に比べて少ないような…… どんな作品が観たい? ふと頭に浮かぶのは、アンリー監督。「ウエディング・バンケット」みたいなゲイ・ムービー作らないかしら、アン・リー監督のものが観たいなぁって、別に根拠はないけれどなんか心に引っかかって、そう思ったんです。 アン・リー監督は2003年にエリック・バナを主役に最新のVFXを駆使して撮った「ハルク」以後作品を制作していない。インタビューでも語っていたように「ハルク」で疲れて、監督を辞めようとさえ思っていたという。「グリーン・デスティニー」でもかなり疲れたのではないかしら。市井の人々を優しくも鋭い視点で描いていた人がワイヤーアクションだのVFXだのっていうのは向かないと思う。かれにはどちらかというと丁寧に丁寧に人間の内面を幾重にも重ね静かに描いた作品を作って欲しい。「グリーン・デスティニー」も「ハルク」も好きですけど。 どうしてゲイ作品なのか。 映画でゲイをテーマ(あるいはテーマの一部)にした作品「マイ・ビューティフル・ランドレット」「モーリス」「アナザーカントリー」「苺とチョコレート」「司祭」「ウエディング・バンケット」「愛するものよ、列車に乗れ」「傷ついた男」…etcほか数本観ている。美形の少年をキャスティングしてそれが売りの作品も中にはあるけれど、確かに美しい男性を見るのもゲイ・ムービーの楽しみの一つ。でも、それだけでなく、人と人との関係、恋愛感情を入った関係で、社会的に認められた男と女の関係で、どうかすると鈍感になってしまっているものが、これらの作品をみて「はっ」とさせられるものにぶつかる 映画に何を求めるか。人間の内面の闇に潜むものを求める一方で、その対極にある崇高なるもの、そして「純愛」「魂の結びつき」を描いたものに強く惹かれる。 「ウエディング・バンケット」で同性愛者のウェイウェイが、父親が緊急入院した病院で、母親に同性愛者であることを告白するシーンがある。「同性愛者にとって本当に信頼できる相手に出会うのは難しいんだ。サイモンは僕にとってはかけがえのない宝なんだ」と彼は言う。 ブルース・ウェーバーの「トゥルーへの手紙」の中で、ダーク・ボガードが恋人とのエピソードについて語っていた。二人は南フランスで暮らしていたが、恋人がガンになったために、フランスの屋敷を処分してイギリスに戻ってきた。ボガードも心臓の持病を持っており、恋人がガン治療で留守にしている間に彼は心臓の発作で倒れ、それを病院から帰ってきた恋人がみつけ介抱したとき、ボガードはどん底の状態だと嘆いたそうだ。そんな彼に恋人は「僕たちには南フランスで暮らした宝物があるだろう」と言ったという。 「宝物」といえる関係。 映画の中で「純愛」「魂の触れ合い」といったものが感じられるものって、やっぱり同性愛をテーマにした作品の中で、より強く打ち出されたものが多い。 アン・リー監督作品とゲイムービー…観たいなぁって思ってたときに 夜中のヴェネチア映画祭受賞式の中継のニュースで「今年の金獅子賞は、アン・リー監督の『ブロークバック・マウンテン』この作品はゲイのカーボーイの20年にも及ぶ愛を描いた作品」ってアナウンスされていた。耳を疑ってしまった。観たいものがそのまんまではありませんか。 私がふと夜中に目覚め、それを知ったのは「神の思し召し」ではないかしらとまで思えました。 翌日、早速ネットで作品情報を調べたけど「ゲイのカーボーイの愛の物語」以上のことは分からない。日本での上映もいつなのかも分からない。 ともかくアニー・プルーの原作を早速読んだ。 彼女はラッセ・ハルストレム監督の「シッピング・ニュース」の映画で知った。 三度の結婚と離婚で三人の息子をもうけて、フリーの雑誌記者をしながら一人で三人の息子を育て上げ、50歳を過ぎてから作家を志したというアニー・プルーの作品には、凛としたものを感じる。 アニー・プルーは自身の作品についてこのように語っている。、 「私の長編小説にでてくる人物は混沌とした変化の中を歩んでいます。そして、現在という時は常に過去の上に貼りつけられています。」 「人は生まれ、生まれた時代を生き、そして死ぬ。私は、登場人物の人生に起こった事柄を通して場所と時代を理解しようと務めている」 この映画化は、やっぱりアン・リーのテイストだなと思った。 キャスティングも、イニスにヒース・レジャー、ジャックにジェイク・ギレンホール。ヒース・レジャーはハリー・ベリーがアカデミー主演女優賞を受賞した『チョコレート』でビリー・ボブ・ソーントンの息子役で出演は導入部分だけだが、父親に対する鬱屈した思い、無力な抵抗、悲哀を見事に表現していて、彼の演技に注目した俳優。ジェイク・ギレンホールも「ドニー・ダーコ」などでしっかりとした演技力を見せている若手俳優。そして絵になる二人だ。 そして観ました。 オープニングの曲が流れる中、夜明け前のワイオミング。空が白む中、ゆっくりと車が走ってくる。そして、見終わった後、波が寄せるように、静かな感動がゆっくりと沸き起こり、私を覆った。 アン・リー監督の作品は、感動7割。その代わり観るほどに味がある作品が多い。友だちに話したら「アン・リーはスルメか」といわれた。そう噛むほどに、観るほどに味が出るスルメ作品だ。 そして、そんなアン・リーの作品の中で「ブロークバック・マウンテン」は私の内に起った感動の波の大きさから測ると、今までで一番完成度の高い作品ではないかしらと思う。 アン・リー<Ang Lee> 1954/10/23 台湾出身 1975年に国立芸術専門学校を卒業した後、アメリカに渡る。イリノイ州立大学とニューヨーク大学で映画を学び、卒業製作作品が84年のニューヨーク大学学生映画祭でグランプリに輝いた。1991年の台湾・アメリカ合作の「推手」で商業監督デビュー。1993年の「ウェディング・バンケット」と1994年の「恋人たちの食卓」で2年連続でアカデミー外国語映画賞候補になった。2000年の「グリーン・デスティニー」は、第73回アカデミー外国語映画賞など4部門を受賞。 ■Filmography ブロークバック・マウンテン (2005) 監督 ハルク (2003) 監督 グリーン・デスティニー (2000) 監督 /製作 楽園をください (1999) 監督 アイス・ストーム (1997) 監督 /製作 いつか晴れた日に (1995) 監督 恋人たちの食卓 (1994) 監督 /脚本 ウェディング・バンケット (1993) 監督 /製作 /脚本 推手 (1991) 監督 /製作 /脚本 ■ブロークバック・マウンテン 2005/アメリカ/134分/P-G12 監督:アン・リー 製作:ダイアナ・オサナ/ ジェームズ・シェイマス 製作総指揮: ラリー・マクマートリー/ウィリアム・ポーラッド/マイケル・コスティガン/ マイケル・ハウスマン 原作:アニー・プルー 脚本:ラリー・マクマートリー/ダイアナ・オサナ 撮影:ロドリゴ・プリエト プロダクションデザイン:ジュディ・ベッカー 衣装デザイン:マリット・アレン 編集:ジェラルディン・ペローニ/ ディラン・ティチェナー 音楽:グスターボ・サンタオラヤ 出演: ヒース・レジャー(イニス・デル・マー) ジェイク・ギレンホール(ジャク・ツイスト) ミシェル・ウィリアムズ (アルマ) アン・ハサウェイ (ラリーン・ニューサム) ランディ・クエイド(ジョー・アギーレ) リンダ・カーデリーニ (キャシー) アンナ・ファリス(ラショーン・マローン) スコット・マイケル・キャンベル(モンロー) ケイト・マーラ(アルマ・Jr.)
by mchouette
| 2007-05-17 01:06
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