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2006年/143分/アメリカ at:ナビオTOHO モロッコ、アメリカ、メキシコ、日本それぞれを舞台に、愛に疎外された人間達が、何かが壊れる事により目の前の愛に気づき……といったストーリになるのか。 監督のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトウは「人間はか弱くて、傷つきやすい、そんな僕たちが、難しい状況をどう乗り切っていくのかを描きたい」と語っている。 「アモーレス・ぺロス」「21g」そして本作「バベル」と、イニャリトゥはその作品の中で、様々な人間とその愛を描いてきた。 アモーレス・ぺロスでは兄嫁を狂おしく愛する青年、不倫相手との愛を獲得したスーパーモデル、家族を捨てた男の孤独、腹違いの弟の殺人を依頼する兄…欲望のままの愛の行方を描いた「アモーレス・ぺロス」 「21g」では交通事故で夫と子供をなくした女とその夫の心臓移植を受けた男、そして車で男と子供をひき殺した男の懺悔を描いた。 バベルでは、主要キャスト以外は地元の演技経験のない人たちが出演している。日本では菊池凛子以外はほとんどを聾学校の生徒たちからスカウトした。またモロッコではマイクで映画への参加を呼びかけ200人の地元民が参加し兄弟を演じた2人はこの地元スカウト組だ。メキシコでも結婚式に花嫁、花婿初めパーティには地元住民が参加している。モロッコ、メキシコ、日本それぞれの舞台で展開する物語がアモーレス・ぺロス同様のリアリティに溢れた力強い映像に仕上がっている。 いくつかの感動シーンがある。 肩を撃たれたケイト・ブランシェットが夫のブラッド・ピットの前でおしっこをもらし、まだ出そうという妻のパンティを脱がしてやり、おしっこをさせてやる夫。静かに夫婦の愛を取り戻す瞬間だ。 誤ってライフルでアメリカ人観光客を撃ってしまい、地元警察から逃れようとして兄が撃たれ、いつも兄といがみ合っていた弟が両手を上げ「僕がやった、兄ちゃんを助けて、助けて」と神に祈るかのように懇願する少年。 また、アカデミ助演女優賞にノミネートされた菊池凛子は、聾唖者、母親の自殺という二重の孤独な疎外感の中で愛を切望する女子高生を見事に演じていた。 3作とも愛を求め、渇望し、孤独な疎外感にさいなまれ、のたうちまわる人間を描いている。人間の数だけドラマはある。しかし、話の展開にはアモーレス・ぺロスような独創的なものは期待できなかった。新たな視点での切り込みをバベルでは期待していたが、アモーレス・ぺロスの続編のような印象を拭えなかった。 例えば、「アモーレス・ぺロス」で、不倫相手のスーパーモデルと結婚するため家族と離婚し、恋人との生活を始めたその日、その夜は二人の記念すべき夜になるはずだった。が、恋人は仕事に向う途中で交通事故に遭いベッドで寝たきりの生活になる。愛の生活になるはずが一転して地獄の日々に。そして恋人は片足切断という事態になり、絶望感に落ち込む男が、床下に入ってしまって出て来れない恋人の愛犬の鳴き声に、泣きながら犬の名前を呼んで夢中で床板をはがす場面がある。「床板をはがして犬を助けて」という恋人の言葉に離婚で無一文になった彼は、その時は犬の命よりも施工費用を気にしていたのだが……その男が犬の鳴き声に、生命の息吹を感じたかのように、犬を助けるため夢中で床板をはがしている。 「アモーレス・ぺロス」では、ほんの些細な事であっても、それによって人は優しさや人としての尊厳を取り戻し、また再生できることを描いている。それが私には魅力ある作品であり、重いテーマではあるが見終わった後に深い感動をもたらす作品であった。そして、その些細な事の描き方にイニャリトゥ独自の切り口と視点を見出し、彼のリアリティ溢れる映像と音楽に私は惹かれた。 しかし、続く「21g」でも「バベル」でもそれ以上の、いや新たな発見は私には見つけられなかった。イニャリトゥ監督に期待しすしぎているのかな……. ただ、本作での俳優達は素晴らしかった。ブラッド・ビットは今後もシリアスなドラマでの彼の演技を見たいと思ったし、菊池凛子は全身で孤独と疎外感を表現しており、彼女への高い評価に納得したし、モロッコの少年は映画が初めてと思えないほどの存在感を見せ、またブラピとケイトの子供役を演じたエル・ファニングは「ドア・イン・ザ・フロア」の時の幼さが抜け、どんな女優になるのかしらと期待できるものを感じさせた。 監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ 製作:スティーヴ・ゴリン/ジョン・キリク/アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ 脚本:ギジェルモ・アリアガ 撮影: ロドリゴ・プリエト 編集:ダグラス・クライズ/ スティーヴン・ミリオン 音楽:グスターボ・サンタオラヤ 出演:ブラッド・ピット(リチャード) ケイト・ブランシェット(スーザン) ガエル・ガルシア・ベルナル(サンチャゴ) 役所広司(ヤスジロー) 菊地凛子(チエコ) 二階堂智(ケンジ) アドリアナ・バラーザ(アメリア) エル・ファニング (デビー) ネイサン・ギャンブル(マイク)
by mChouette
| 2007-04-30 00:00
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