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PUCCINI E LA FANCIULLA
2008年/イタリア/84分 監督・原案・脚本・美術:パオロ・ベンヴェヌーティ 「喋々夫人」「ポエーム」などで知られる作曲家ジャコモ・プッチーニ。 そんなプッチーニにまつわるスキャンダル「ドーリア・マンフレーディ事件」と呼ばれる、プッチーニ家の小間使いの娘が自殺するという事件を題材に、パオロ・ベンヴェヌーティ監督が入念なリサーチを基に描きあげたという作品。 セリフはほとんどなく、サイレントといっていいほど。 セリフに代わって、プッチーニの妻が、プッチーニが、小間使いドーリアがしたためる手紙が、ナレーションではなく、字幕によって語られていく。 イタリア・トスカーナ地方の湖畔を舞台にした物語。 静謐で、絵画をも思わせる美しい映像。 流れるのはブッチーニが作曲するピアノのメロディ。 この静寂ともいえる時間の流れの中で、プッチーニ家の小間使いの娘が自殺に至るまでが語られていく。ドーリアを取り巻くプッチニー家の人々の俗物的な嫉妬、怒り、陰湿さが粛々と描きあげられていく。 ラストの、天を仰ぐような木々の映像など、神の視点からみたような、そんなドーリアという純な娘の受難の物語。 プッチーニの妻エルヴィーラに姦通を疑われ、プッチーニ家から暇を出され自宅に監禁されたドーリア。プッチーニに助けを求めるも、彼は妻の執拗な嫉妬心に辟易しパリに逃げてしまう。エルヴィーラに人前で激しく罵られ、神に救いを求めるも、神父は彼女を拒絶する。そして自殺する。 生前に遺体解剖を要求していた彼女は、解剖の結果その純潔が証明されたという。自らの死をもって身の潔白を証明した小間使いドーリアの悲劇。 人の世に渦巻く愛欲や業を閉じ込めるかのようなサウンド・オブ・サイレンスの美しい映像世界。そして密かに愛人との逢瀬を重ねるプッチーニが紡ぎだすメロディーの崇高さ。 映像の一層の純化を求めるかのように、セリフまでをも削ぎ落とした映像。 純な象徴として、人の世の汚濁を一身に引き受けたともいえる小間使いドーリアの受難。 教会で神を仰ぐ姿は、ストールを頭から被ったその姿は聖母マリアにも重なる。the Virgin Mary(処女マリア)と呼ばれる聖母マリア。 確立された美意識と作風に支えられた作家性の強い作品ともいえる。 そういう作品は、どうかすると観るものに映像との対峙を強いる緊張に疲れる作品も多いけれど、本作は美しい映像と音楽に誘われるように、いつしか作品のゆったり流れる時間に寄り添うように魅入ってしまう作品。
by mChouette
| 2012-04-18 00:00
| ■映画
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