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APOCALYPSE NOW REDUX
2001年/アメリカ/203分 監督: フランシス・フォード・コッポラフランシス・フォード・コッポラというその名前を一躍世界に轟かせたのはなんと言っても「ゴッドファーザー」(1972)だろう。そしてまだ無名だったアル・パチーノの存在を揺るぎないものにしたのもこの作品だろう。そして74年にはマーロン・ブランドが演じたヴィト・コルレオーネの若き日をロバート・デ・ニーロが演じた続編「ゴッドファーザーpartⅡ」を製作し、前作以上の高い評価を受け、そのコッポラがまたもや大作を!と、撮影中のトラブルなどもずいぶんと取りざたされ話題になったのが「地獄の黙示録」(1979年/日本公開1980年)。 劇場に観にいったものの、コッポラは何という映画を撮ったんだ!と、ただ、ただ、なんというか壮大といおうか、戦争の無意味さと狂気をここまで描ききったか!と。そしてマーティン・シーン演じるウィラード大尉が観続ける地獄絵図に、ドアーズの曲が、ジム・モリスンの歌う声がなんとも不気味なぐらいにあっていることか。 なんともおぞましくそして美しいその映像は、作品について語る言葉を奪うほどの迫力で圧倒させられた。 そして公開から22年を経た2001年に、コッポラの手で未公開映像53分を追加して再編集された「地獄の黙示録 特別完全版」。 本作を観るのはたしか2回目。 そして改めて思う。 これほどの映像をよくぞと撮ったものだと。 オリジナル劇場版は、ストーリーそのものよりも、戦争の狂気と無意味さを強烈なイメージを観る者に焼きつけたといっていいだろうか。 それに較べて、特別完全版ではカットされ断片的とも思えた各シーンが補足されたことにより、ストーリーの時間軸の中でウィラード大尉の内面にさらに近づいて観ることができたように思う。 あえて言うなら劇場版が神話的であったとするならば、特別完全版はより現実を俯瞰した絵図といってもいいだろうか。 原題の「APOCALYPSE NOW」は直訳すれば「現代の黙示録」とりわけフランス入植者たちとウィラードとの出会いを追加することによって、ベトナム戦争が19世紀から20世紀に引き継いだ歴史の中にしっかりと位置づけられて語られ、より俯瞰的、多面的にベトナム戦争が描かれ、そこからその後の懲りないアメリカをも浮かび上がってくる。 19世紀、先進諸国が世界を我が手にと推し進めた植民地政策が崩壊し、フランス入植者達とのシーンでは、フランスが犯した過ちを彼等の口から語らせている。「アメリカは…きっと正しいのだろう。アメリカはアメリカのやり方でやればいい。」そうも言わしめている。 「ここは祖父が切り開いた土地だ。ここが我々の家なんだ。ここを守る為に戦っている。君は何のために戦っているんだ。」そう問われたウィラードは答えられない。 「何のために戦うのか?」 この答がアメリカから明確に出てこない戦争がベトナム戦争以降だろう。 第二次大戦以後、植民地政策を推し進めてきた先進諸国が疲弊する中で一気に世界のリーダーとして突っ走るアメリカの愚行とも思えるベトナム戦争。その後も舞台を中近東に移して新しい戦争を生み出している懲りないアメリカ。 ベトナム戦争が毎日のように戦場カメラマン達や報道関係者によってリアルタイムで伝えられ、反戦運動が沸き起こり、戦争そのものも泥沼化し、アメリカ国内でもベトナム戦争に対する批判が湧き起こり、ベトナム帰還兵たちを迎えるアメリカ国民の目は冷たい。 ウィラードが、帰郷を待ち望む兵士たちを見ながら独白する。「彼らは知らないんだ。帰るべき故郷がないことを…」アメリカは内外ともに窮地に立たされた。そして、ベトナム戦争以降、厳しい報道規制が敷かれるようになった。中東に対するアメリカ軍の派兵について、実態について、マスコミを通して知りうる情報は絶対的に少なくなっている。 19世紀のフランス領インドシナから20世紀にアメリカと戦うベトナムへ。 コッポラが20世紀の世紀末にふさわしい壮大なる地獄絵図を、その遺産を受け継ぐ21世紀の幕開けに際し特別完全版を再編集、公開したのも肯ける。 フランス人入植者の一人。夫をこの戦争で亡くした未亡人がウィラードに語る。カーツが築いた王国の爆破シーンを敢えて削除し、ウィラードは彼を新たな王として群がる原住民達に一顧だにせずハンスを連れて船に戻る。爆破要請の指示を待つ無線の電源を切ったウィラードがどこへ向うのか?それは21世紀という時代に突きつけられた問いでもあるだろう。 書き出したたあれやこれやと言葉がでてくるけれど、「地獄の黙示録~特別完全版」2回目を鑑賞して、やはり思うのは、よくぞこれほどの映像を撮ったものだ。ここまで描ききられたら、その後の映画は何をどう語ればいいのだろうか。 つくづくとそう思いながらただただ観ていた。
by mchouette
| 2010-10-29 00:00
| ■映画
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