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LOS ABRAZOS ROTOS
2009年/スペイン/128分/PG12 at:梅田ピカデリー 監督: ペドロ・アルモドバル前作「ボルベール<帰郷>」では、世間の評価とは反して、私的には、作品トーンと作中の女たちの逞しさにどうもギクシャクしたものを感じ、監督であるアルモドバルに世迷い人的な印象を持ったのだけれど、今回の「抱擁のかけら」では、彼の成熟した境地を感じた。 レナとマテオの狂おしいまでの愛を主軸に、人間の欲望の構図ともいうべき姿を生々しく濃厚に描きあげた本作。 死の直前、女は男の愛を唇に感じながら死んでいった。 次の瞬間、二人を襲った事故で女は死に、男は視力と共に愛する女を永遠に喪い、映画監督マテオ・ブランコの名を自ら封印してしまった。 マテオだった14年前と、脚本家ハリー・ケントと名乗る現在を交錯させながら、愛に翻弄された人間の業が、いままでアルモドバルがその作品を通して描き続けてきた人間の業が本作に凝縮されたような濃密さで描きあげられている。 けれど、むせ返るような濃厚さではなく、むしろ縋るような、悲鳴とも叫びともいえる痛ましいまでの切なさで伝わってくる。 残されたフィルムに刻み込まれた愛の一瞬を、その確かな愛の印をいとおしむように、確かめるように、かつての記憶をまさぐるように、映像を何度も何度も手でなぞるマテオの姿に思わず目頭が熱くなる。 「完成させる事が大事なんだ。手探りでも…」 マテオの言葉がアルモドバルと重なる。 映画が誕生してから今に至るまで、映画は人生の印、人間の業を刻み続け、フィルムの中で幾度も幾度も甦り、男と女の狂おしいまでの感情は、映画への愛へと重なり、映画へと結実し、映画への限りない愛へと昇華する。 レナとマテオが観たロッセリーニ監督の「イタリア旅行」。 人は翻弄されながらも人を愛し続ける限り、映画は生き続け、映画作家はその愛を映画に凝縮させ、愛は解き放たれる。 男と女の狂おしい愛が、アルモドバルの映画への限りない愛へとみごとに結実していった「抱擁のかけら」。 男と女の愛になぞらえたアルモドバルの映画製作に込めた彼の愛、熱い思い。 これぞアルモドバル! そして本作でも、アルモドバルの赤ともいうべき赤の映像が素晴らしい。
by mchouette
| 2010-02-22 09:52
| ■映画
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