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我が家が購読している新聞は日経新聞。
文化面の充実もなかなかで、これはこれでいいのだけれど、どうも日常レベルの野次馬話には疎くなるので、毎朝立ち寄る喫茶店では朝日新聞を、興味ある記事だけトピックス的に読んでいる。 今朝の朝日新聞の「文芸時評」で文芸評論家の斉藤美奈子さんの、“すばる”“文藝”“新潮”の文芸誌3誌の新人受賞作についての論評が面白かった。 最近の映画をみていて私がつくづく感じている、そのことに通じる言葉がずばりずばりと書いている。 先日の芥川賞候補作品についても、選考委員である石原慎太郎氏のかなり手厳しい最近の作品に対する選評を読んでいても、まさに映画の世界にも通じるなぁって思い、この時には文学者としての石原氏をちっと見直した。 今年は受賞者も多士済々。普通の意味でも「おもしろい!」作品が多かった。そう斉藤さんは述べる一方で、 ただ、まったく異なるテーマを異なる手法で書いているにもかかわらず、どこか似ているのだ。どこが? 構成、あるいはテンポが、である。そう指摘する。 そして、文藝賞受賞作「ボーダー&レス」そしてすばる文学賞受賞作「海猫ツリーハウス」の2作品を取り上げて、こう語っている。 両作とも断片的なエピソード(ひとつひとつはおもしろいのだが)を、どうだ、これでもか、まだあるぞ、というように次々投入してくるあたり「もしかして退屈恐怖症?」と思わせる。読者を退屈させたらオシマイだと思っていない?そして、 「海猫ツリーハウス」が「新しき村」のある種のパロディ。「ボーダー&レス」は在日文学のパロディに見えるかもしれないが、しかし作者にはパロディを書いているという意識はないだろうと斉藤さんは語る。 シリアスな課題をあえて笑いに転化する、のではなく、おそらくこれが現代の「リアル」なのだ。さらに、 それにしてもみんなに共通する「ネタ感」「お芝居感」は何だろう。最後にこんな言葉で斉藤さんは締め括っている。 歩くスピード、人の鼓動と同じスピードで、時にはじっと無言のままで立ち止まり、そうして語られていた映画が、段々と駆け足になり、スリル感とスピード感で観客をスクリーンに釘付けさせ、そのくせ、終ってみると映画を観終わった後のなんともいえない充足感、映画の余韻に浸りながら席を立つというあの幸福感が薄れてきている。 そして対極ではハートフルと言われるような癒し系、ゆるり系も多い。 シリアスに描いた作品でも、どうも抉り方に浅さがあってこちらの胸に響いてくるところまでは達しなくって、演出にわざとらしい技巧を感じる。 先日、カトリーヌ・ドヌーブ主演で、ルイス・ブニュエル監督の「哀しみのトリスターナ」をCS放映で見直したけれど、女の隠された一面を見事に抉り出し、シリアスな仮面をつけながら見事にパロディっているこの手腕に、同じ女としてギクリとしつつもここまでさらけだされると実に小気味がよい。同じ感覚で「小間使いの日記」なんかも好きだなぁ。 「ビリディアニ」なんかはどこまでもどこまでも聖女であろうとするビリディアナには思わず胸の中で笑ってしまいそう。 それでも何度も観てしまうのは、やはり人間の本質に切り込み、人間の本性をさらりとぐさりと描き出しているブニュエルの鋭い視線があるからだろう。 観たいと思う映画も少なくなったけど、小説もそういえば最近作って書店で立ち読みしても買いたい本ってないなぁ。 こんな論評読んでいると、これが今なのかなぁと思うと、そこにズレを感じる私も旧世代ということなんだろう。 「今の若いもんは…」こんな言葉を私も若いときはよく耳にしたもんだわ。 ただ、今がいいのかどうか……。
by mchouette
| 2009-10-27 10:06
| ■徒然なるままに…
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