by mChouette 検索
カテゴリ
全体 ■映画 =映画:あ行 =映画:か行 =映画:さ行 =映画:た行 =映画:な行 =映画:は行 =映画:ま~わ行 ■映画・雑記 ■ドラマ ■展覧会・コンサート ■一冊の本 ■徒然なるままに… ■美味しいもの ■アウトドア・旅 ■勝手にバトン ■ご挨拶・お知らせ 未分類 最新の記事
その他のジャンル
|
BUNNY LAKE IS MISSING
1965年/アメリカ/107分 本作は今まで知らなくって、WOWOW放映の作品紹介を読んでいると「フライト・プラン」に似た話で、元ネタっぽかったのに興味を惹かれ鑑賞。製作年からしても、きっときちんと作りこまれた作品だろうなっていう期待もあった。(「フライト・プラン」は見たい気も起きず劇場鑑賞も、DVDでも観てませんが…) オープニングデザインはソウル・バス。 この時点からして、すでになにやら胸をざわつかせるサスペンスタッチ。 モノクロ映像。 最後まで緊張が途切れず、画面から眼が離れないってのが、まさに映画鑑賞の醍醐味。 ロンドンに越してきたばかりのアン。 そんなアンを気遣う兄のスティーヴンは、どこか頼りなげなアンの保護者のようにすらみえる。アンもスティーブンに頼りきっているみたい。 引っ越してきたその日の朝に愛娘バニーを預けた保育園に、アンは娘を引取りにいくが、バニーの姿はどこにも見つからないし、誰もバニーを見なかったという。 動転したアンから連絡を受けて兄のスティーブンがやってきて、埒が明かない保育園側の態度に業をにやし警察にバニーの捜査を依頼する。 やってきたのがローレンス・オリヴィエ扮するニューハウス警部。 未婚の母のアン。 アパートの部屋にあったバニーの持ち物がことごとくなくなっている。 動転したアンの不安と思いこみからくる曖昧な供述。 ニューハウス警部は、バニーという娘は、アンの作り出した妄想の存在ではないかという疑念さえ抱く。 監督のオットー・プレミンジャーさん。ビリー・ワイルダー監督の「第十七捕虜収容所」では冷酷なドイツ人捕虜収容所所長を演じていた方。 神経症的なところもみせるアンの言動に、観ている私は、ずっとずっと、バニー・レークってやっぱり実在しないアンの想像上の娘?って思いながら観ていたけれど……結末はやはり書かない方がいいでしょう。 何が怖いって、やっぱり人間の心の歪んで屈折した空洞が一番怖い。 子どもの頃に満たされなかった愛が倒錯した愛を生み出し、人の心に闇の世界が拡がる。 ラスト近くのブランコのシーンが、これほどの恐怖を感じさせるなんて! ビジュアル優先の映像表現がもてはやされる昨今だけど、その恐怖感や不安感はスクリーンを観ている時だけ。劇場を出るときにはきれいさっぱり消滅してしまっている。執着しないのが、そこから離れたらそれっきりが現代気質なんだろうか。映画もジェットコースターみたい。 くっきり刻み込まれてこその映画の醍醐味だと思う私には、凝った映像表現よりも、哀しさや淋しさから生み出された人の心に巣くった闇がみせるこんなサスペンスが胸にじわじわと迫ってきて、だからこそ何度も観たくなる。 本作は原作はハヤカワ・ミステリーから出版されているけれど、ビデオ化はされていないみたい。 これは残念。 地味だけど傑作だわ。
by mchouette
| 2009-10-08 08:52
| ■映画
|
ファン申請 |
||